朝はやき電話の声や春来る
薄くとも葉をまろくして春の雪
春の波初孫の名の好もしき
沈丁の蕾入れたやバスケット
淡き雪やっぱり庭へ出てしまふ
春炬燵おんなばかりのなごやかさ
桜餅てのひらにして母恋し
子の乗る機なのかもしれぬ春の雲
いよよ身を縮めて今日の沈丁花
明るさも降らすよ春の粉雪は
春愁やディミニッシュ音消えてゆく
茂吉忌は過ぎれど第三歌集手に
三月の携帯電話パステル調
貝雛に眼を遊ばせて長電話
啓蟄や花瓶の花を捨ててしまふ
朝に見し女に似かよふ白椿
春疾風大用水路工事中
蛍烏賊光りたくとも光られず
春の雨アルト・サックス三拍子
今日あたり靡く気がして糸柳
パンジーよ留守番電話ひとつだけ
なんとなく話すだけでも春の夜半
帆柱やむらさき色の春夕焼
春の季の星座の金のペンダント
花簪ゆらゆら馬酔木咲きにけり
春雷や蕾はむしろうれしげに
小さき嘘くせなのエイプリル・フールに
うす紅に桜つぼみの雲流れ
花束よ小さき笑顔はさくら色
アンテナに尾の長き鳥黄砂来る
櫻散るころ仰ぎたき一樹あり
てふてふのかたまってゐるやうな花
見つけたり午後連翹のかくれんぼ
ハンギング・バスケットの列春の雨
私の夢春の海辺に置いてある
春愁をすこし雑誌の整理など
満天星の庭の句会へ誘はれき
花殻を摘みつつあれば夏隣る
藤房の短くて揺れかろやかに
春尽くや買物ひとつわたくしの
躑躅咲きからくり時計家康公