Summer
−2000−
大いなる五月の日輪昇りたり
5/5
(FRI)
噴水のゆれる川辺の少女たち
川の中から生れる噴水。
岸辺は新緑。
まだ残っている菜の花の黄。
藤やつつじを見に行く人々の年令はいろいろだけれど
この季節の噴水に似合うのは、かろやかに弾んでいる少女達。
5/6
(SAT)
波形の皿に鳳梨切り分けて
この向日葵の花は、パイナップルの色にも似ている。
数日前に友達が来ていて、朝食の後、二人で食べたパイナップル。
小振りで芯までやわらかく、甘くて。
部屋中にその香が流れたっけ。
5/9
(TUE)
夏燕メロディーひとつ流れ来る
美しい甘美な曲はメキシコのマリアッチ。
その歌、「ラ・ゴロンドリーナ」
5/10
(WED)
ほっぺたのまあるき笑みに若葉風
抱っこしてあやして頂いたおばちゃまの、ちょっと大きな声にびっくりして泣いたSaki。
でも、すぐに、うれしそうに、てれたように笑ったSaki。
クリーム色のウエアが似合うSaki。
5/11
(THU)
若楓に添ひて歩めば緋毛氈
公園の藤も躑躅も、もうほとんど花は過ぎていたけれど
茶室庭園の楓の若緑が、爽やかな美しさ。
和菓子は「若楓」、抹茶の色も!
5/14
(SUN)
半分は田植の済みし緑色
あまり蒸暑いので南側の窓を開けた。
思いがけない、ほんとうに思いがけない水田が!
以前は住んでいた所なのだから、知らないのではない、忘れてしまっていたのだけれど。
風に揺れる水と、苗を眺めて、一度に涼しくなったような。
5/17
(WED)
初夏の月朱し白球みだれ飛び
なに、それ?
どなたかに言われそう。
夜のゴルフ練習場です。
ネットの向うに赤い月が見えました。
1年以上も行ってなかったわたしは、50球打ったかどうかで、眺めていましたから。
おまけのお話です。
帰る時、クラブと一緒にトランクにキーを入れてしまった人がありまして!
‥‥‥
JAFのおにいさんはあっという間にドアを開けて下さり、夜目にも爽やかな笑顔でした。
戻ったら10時半を回っておりましたね。
今、水玉がゴルフボールに見えてます。
5/20
(SAT)
守宮居てさしておどろくこともなき
それほどに、マンションの白っぽいタイルの色と同じでした。
玄関の灯りに照らされて、影が動いたので気付いたくらいですから。
5/23
(TUE)
萍が三角形となる水田
この句は十年、もっと前に作ったもの。
田植の季節には思い出す句。
見てみると、昨年も書いていた。
5/25
(THU)
草取やどこか古風なJAZZ流し
小さな庭の芝生なのに、小さな草がいろいろ生えて。
いくら可愛いからといっても、そろそろなんとかしなければ。
水遣りは好きでも、草取はそうでないから、有線のヴォリュウム上げて。
「ごめんね」なんて思いながら。
金柑の花を見付けたけれど、撮るには少し、お・そ・い‥‥
5/26
(FRI)
言葉には出してはならぬ額の花
そうなんです。
ですから、なんにも書きません。
5/28
(SUN)
薔薇館女主人は留守らしき
とても気になる
薔薇館
なのに
近くまで行っても、本気で探そうとはしない。
何故かは自分でもわからない。
そのくせ、お留守みたい、なんて‥‥
5/29
(MON)
葛餅や外は葉に降る雨の音
昨日から冷蔵庫で冷えていた葛餅。
迷ったけれど、焙じ茶で。
5/31
(WED)
花南天ゆたかに揺れて下校の子
車は一方通行の細い道。
ゆるく曲る角に丈の高い南天がある。
目立たないけれど、白い花房が風に揺れる。
そして、この道は小学生の通学路。
6/1
(THU)
すずしげにものいひたげにみつめられ
6/3
(SAT)
蕗を剥く手に沁む匂ひ母近し
煮るすべは知っていても、買ってまでは来ない人がわたし。
届き物だから、きれいだから茹でて皮をとる。
手の動きに母を見て、気が付けば、その彼女はわたしよりもずっと若い。
6/4
(SUN)
雨降らばひらく気配よ沙羅つぼみ
姫沙羅の蕾が白くふくらんで来た。
「咲きたいんだけど、雨が降らなきゃね」
「そうなの、雨の日に綺麗に見えるんだもの、わたしたち‥‥」
6/5
(MON)
ここだけは大掃除済み冷蔵庫
こわれたおかげで、すっきり拭き上り
中にもほとんど物が無い状態に。
いつまで、これを保てるのかしら?
さっそく買物に行こうとしているわたし。
6/7
(WED)
昼寝覚小鳥の唄は三拍子
6/8
(THU)
島ふたつのみ浮びたり梅雨の海
梅雨に入った日の、海辺のホテルで昼食を。
テーブルは海に向っていて、ここから灰色の海を見るのは初めて。
海というより、湖?沼?
慣れて来ると、不思議に落着いた気分になっていて‥‥
緑の木々の間に現れた二人連れの、傘の色が美しい。
6/9
(FRI)
あぢさゐよ姉の絵葉書巴里より
俳句を作ると決めた年の句。
ある雑誌の俳句欄に二度目の投句をし、続けて採られた句。
最初の句は
騎馬戦の騎乗の吾子に風薫る
だから、次男はまだ小学生だった頃。
・・・・・
前年に、俳句を楽しむ兄を失っていた。
彼の句で好きなもののひとつ。
旅立ちの朝あぢさゐは雨が好き
あつし
センチメンタル・ジャーニーに出た人からの絵葉書である。
「あぢさゐよ」は、兄への話し掛けだった。
6/11
(SUN)
毒消売ならぬキムチを売る女
「キムチ、カラダニイイヨ!」
突然、不思議なイントネーションで話し掛けられた。
見ると濃い化粧で、長い付け睫毛のチマ・チョゴリを着た美人。
一人買っている人が居て、つられて買ったわたし。
昨夜のテレビの料理番組で見た、コチュジャンをほしいと思ったせいもある。
「はい、レシートね、どうも有難うございました」
いつの間にやら、普通の話し方になっている彼女!?!
6/13
(TUE)
泣くことも美しければ沙羅の花
雨の日の沙羅の花のように
あんな様子で泣いているひとが居たとしたら‥‥
6/14
(WED)
黄の百合は朝の光を浴びて立ち
一年前に静岡の「可睡ゆりの園」で求めたもの。
一本だけだけれど、伸びて来て咲き初めた。
あの黄金のうねりのような百合の波を思い出しはしても、この三輪の輝きも素敵!
コネチカット・キングという名を、似合うと思う。
6/16
(FRI)
白玉の浮き上がるまで数かぞふ
いつか、五歳の女の子といっしょに、ひとぅつ、ふたぁつ、と数えてみたい。
あら!One,Two,Three なのかしら?
まさか、ねえ。
6/19
(MON)
トランペットより梅雨の星屑生れたり
雨の夜に響く「スター・ダスト」
久しぶりの JAZZ LIVE。
弾き語りの甘い声も、なのでした。
6/22
(THU)
梅雨晴間不在者投票封をして
6/24
(SAT)
茉莉花にひびき来るあの言葉つき
ひまわりは黄色、ニオイバンマツリはむらさきに咲く。
紫に咲き、日毎にうすくなり、白い花に。
強い芳香は、そのまま。
どうして、また咲いたのかしら?
今年三度目。
「それはねえ、きみ」
そんな声が聞えて来そうな。
6/27
(TUE)
ぬかるみに踏み出せずして青田道
午後からは雨が上り、陽射しすら。
歩いてみたくなって川の方へ。
ところが、なにしろ雨上りの農道。
雨の日用にと決めてはいても、革靴ではね。たちまちにして立ち往生。
仕方がないから、萍のカーペットを眺めてました。
6/28
(WED)
向日葵のやうに視線を上へ上へ
さて、何のことでしょう?
7/1
(SAT)
今朝もまた三十の白沙羅落花
レンガタイルの上に、沙羅の花は落ちる。
根元の土にも落ちるけれど、目立つのは煉瓦色と白。
花のあとには緑の実が。
上の方の枝に、それと同じような大きさの白い蕾もいくつか。
でも、もう、この暑さは、沙羅の花には似合わない‥‥
7/2
(SUN)
わたしだけのため大皿のさくらんぼ
大皿‥‥ちょっと おおげさ かしら。
でも一人にしては大皿です。
一枚しかないロイヤル・コペンハーゲンのお皿に盛って、デジカメで撮って。
お礼の手紙に添えました。
出来はあまりよくありません、なにしろ、プリンターが‥‥と、そのせいにしましょう。
7/5
(WED)
若かりき夏手袋を編みし頃
歳時記の「夏手袋」が目に入り、思い出した。
白いレースの手袋を編んだことを。
7/7
(FRI)
絵葉書は夏の旅からスイスから
シオンの落ついた風景でした。
素朴とも思える古城と、棚田のような丘の。
だから、わたしも、ちいさな、ちいさな、旅へ出ましょう。
7/8
(SAT)
オリーヴのみどり濃き実よ夏木立
喫茶店の庭のオリーヴに、小さな実がいっぱいに生っている。
強い日を浴びて、葉裏は銀色に光り、実はゆれる。
どこかで見たわ、この実。
ずうっと前に、小豆島のオリーヴ園!
7/10
(MON)
日本画のひまはりややにもの想ひ
翡翠の色に近い表装で向日葵の五輪。
墨で描かれた葉と茎のせいか、黄色の花も、そう見える。
7/12
(WED)
蕃茄の小さきを更に切りてをり
「あかなす」と読むらしいです。
美味しいミニ・トマトでした。
7/13
(THU)
間違ひの電話ばかりや冷奴
暑いから?
局番が1番ちがいで、あとは同じ番号が、こともあろうに知人の会社。
それほど親しくはないから、困るわ、とも言えない。
今朝から、何度も!
それ以外にもあったのは、やはり暑いから?
「研究所じゃないんですか?」などと。
返事はだんだん冷たくなって行く‥‥だって、暑いんですもの。
そう、この間はこんなのがあった。
「ぼく、○○です!△△ちゃんはいますか?」
小学生かな。
真剣な声で、もう可愛いったら!
こういう時は、わたし、優しい。
7/14
(FRI)
月蝕の訪れ知るや夏の月
7/15
(SAT)
青芝の向ふ可憐に花の咲く
何年もの間、実が色付くまで気が付かない、庭の隅の紫式部。
うすむらさきの花
が咲いていました!
枝の下の方には、もう、緑の実が生って!
7/17
(MON)
ひそやかなたのしみ芝生での裸足
37度ですって!
今日の気温。
この数日、夕方の水遣りはサンダルを脱ぐことにした。
ホースを持って、シャワーのように先ず芝生に掛ける、その上を歩くと、どう言えばいいのかしら!
清涼感!夏の素晴しさ!
少しくらい、蟻に噛まれたっていいわって、思っちゃう。
ずっと前に、もっと広い庭の家に住んで居た頃の句を思い出す。
秋の虹見たくて芝を踏む素足
それは、子供と一緒に飛び出した時。
7/19
(WED)
潮騒も海酸漿の唄も遠し
7/22
(SAT)
ミント・ティー冷して河童忌の独り
今朝、ミントの花が咲いていた。
暑い日がつづく中の、涼しげな色の花。
午後のわたしがほんとに飲んだのは、アップル・ティーの冷たいのでしたけれど‥‥
7/24
(MON)
茉莉花のかぐはしさ海の香も少し
どうして海の香、ですって?
それはね、ペナンの、潮の香に満ちた庭園で、花を付けた何本かのバンマツリの木を見たことがあるから。
そしてもうひとつ。
海辺の町のfuさんから、押し花の葉書をもらったことが。
サンパウロでは街路樹になっていて、大木もあるそうですよ。
7/25
(TUE)
人よりも遅れて青田のかたはらを
お昼の食事の帰り道、数人で歩いていると携帯電話が鳴った。
話しながら歩くと、いえ、話しながらを理由のように一人離れて行く‥‥
こんな道、一人で歩きたいです。
さわやかに青い稲の葉を見ながら。
あら!
黄みどりの、背の高い田は、もう、稲穂が見えてる!
こんな場所に、大きなホテルがあって、お昼、美味しいんですよ。
10分も歩かない距離なんです。
車で行く人ばかりですけれど、車じゃない方がずっとずっと素敵です。
7/28
(FRI)
テーブルに小さき刺繍の夏帽子
7/30
(SUN)
やうやうにつぼみもゆれるさるすべり
それでも、咲き始めるのはおそらく中旬になる、わたしの庭の白いさるすべり。
昨日のこと、以前に住んで居た家の百日紅は、色濃く咲いていた。
あの木に付けて植えてもらったのが、この白い花の木で
若木なので、引越しの時に持って来たのだった。
遅れて咲く白い花の涼しさが、とても好き!
8/1
(TUE)
一人住みならねど独り遠花火
十年ぶりくらいかしら?
ひとりで花火を見るなんて。
ううん、違うわ、初めてかもしれない。
庭からは、濡れ縁に立てば、生垣越しに打揚げ花火が見える。
あら、今まであんなのなかったけど‥‥
三色ほど重なっての、円、楕円、菱形、四角、あまり大きくないのが続いて。
まるで、アイコンみたいじゃない!
あの、賑やかな川沿いの花火見物もいいけれど、毎年だったから、こんなのもいいわ。
8/5(
SAT)