Winter
−2000−
元朝の光あふれりこの部屋に
龍の書を掲げて四人屠蘇祝ふ
1/1
(SAT)
懐しき押し絵羽子板舞妓の絵
わたしの持っていた羽子板は、友達のとは違っていた。
大きな顔の、赤い絵柄の羽子板がとても羨ましかったし、欲しがってもいた。
「あなたのは、これなの」というのが母の決った返事で
それでわたしはあまり羽根突きが好きではなかったような。
今、思い出すと、素敵な羽子板。
空色の背景には淡く櫻と五重塔が描かれて、だらりの帯の舞妓の後姿!
1/2
(SUN)
しばらくをひたすら白き毛糸編む
暮から編み始めていたけれど
短時間でも集中出来るのは年明けて。
久しぶりの毛糸編。
1/3
(MON)
なんとなく喜ばしくも破魔矢得て
恒例になっている安全祈願。
そして、もちろん商売繁盛も願って。
天守閣の傍に位置する龍城神社。
今年はより有難く思えて、その上に二つのお願いも。
きっと、みんな叶えて戴ける!
1/6
(THU)
庭に来て寒禽唄ふやのそぶり
いつもは十二月に花開く白の侘助椿が
一昨夜の雨でやっと咲く気配。
白い、ふくらんだつぼみを見付けて、もう鳥が来る。
それでも、まだ遠慮がちに垣根に止まって首を振っているだけ‥‥
「あと、二日もしたら、美味しいかな」と思っているみたい。
お願いだから、しばらく食べないでほしいの、ね!
1/8
(SAT)
ゆるすべし花を啄む初鴬
鶯が来ている!
それも二羽。
この字の色のような緑色で、細かく動き
咲き掛けた椿
をつついている。
鳴声は、微かに、ちちち‥‥とだけ。
ですから、出掛けた時に、和菓子屋さんで、うぐいす餅を五つ買ってしまいました。
1/11
(TUE)
響きをり歌会始の歌ひとつ
見るともなく見ていたテレビの「歌会始」
指先に打鍵の重さ兆しつつショパンの「革命」弾くとき迫る
中尾裕彰
この歌が新鮮に思えたのは、作者が高校生ということもあるだろう。
「革命」の曲名に依ることもあるかもしれない。
それにしても、この緊張感は俳句では表せない。
文章にすれば、薄れてしまう。
ここ数日、鳴り止まぬ一首。
1/17
(MON)
襟巻の形くづれて落着かず
襟巻というよりは、スカーフといいたいのだけれど。
ほら、あるでしょう?
プリーツのスカーフ。
初めはいいのよね、格好よく襟元を飾ってくれる。
地味なウェアがぱっと明るくなる。
ところが、出掛けてみんなで話している時に、なにやら変形しているらしいのを感じるのね。
普通のスカーフなら、何気なく整えられるものを、あれはそうは出来ないの。
で、また暫く抽斗の中へ入れっぱなしになってしまう‥‥
どなたか、教えていただけます?
1/19
(WED)
薄雲に透き白く在り寒月の
月が見たくて庭へ出た。
薄い雲が東へと流れている。
数時間前には一片の雲もなく、妖しいほどに耀いていた月が
今、やさしく白い。
1/22
(SAT)
ふた筋の想ひひとつに毛糸玉
細い毛糸を二本どりで編んでいるから。
もうすぐ編み上がるから。
ふっと、過ぎた日を振り返って、それを今に重ねて‥‥二人のひとの話し声が聞えて来そうな。
1/23
(SUN)
さざんかの国道は好き混みゐても
どうして、街の真中を国道1号線が通っているの?
越して来た時からの疑問は、きっと何時になっても解決しないわ。
でも、この季節だけは、あちこちに紅い花を見て、まあまあ、ほっとする。
しずかな私の庭の山茶花の色の方が、鮮やかですけどね。
1/25
(TUE)
冬深し携帯電話のメロディーが
鳴ったからなんなのよ、と言われそう。
そうです、一般的にはね。
わたしのは、一ヶ月に三度も鳴らないんです。
午後の冷え込んでいる駅前で、ちょっと驚きました。
どんなメロディー?
そう、訊ねてくださるのですか。
入っていた幾つかの中では、モーツアルトかな、と。
いえ、子守歌ではありません‥‥
1/26
(WED)
ジャム・トースト寒風遠き店の内
入ったとたんに、あたたかい。
温度もそうだけれど、中にいる人達の雰囲気が。
まだ何回かしか来ていないのに、十年も前から通っていたような。
1/27
(THU)
LDのピアノ軽やか春隣
これは、もう一つの喫茶店。
JAZZ LIVEのレーザー・ディスクが揃っている。
コーヒーが余計に美味しくなる音‥‥
1/31
(MON)
一隅にほのかな色香蝋梅の
あら!
あの花は!
やっぱり、そうなのね。
そうなんですよ、今朝はもっと匂っていました。
そんな話をしながら、きっと、二人とも若い頃だったらこの花に惹かれはしなかったと。
2/1
(TUE)
節分の夜も更けてJAZZに包まれる
しっとりと歌い上げる「星に願いを」や「Star Dust」
ボサノヴァがお得意の彼女なのに!
こんな節分の夜もいいな‥‥
2/3
(THU)