Winter
−2000−
立冬や富士らしき薄き影空に
11/7(TUE)
クリスマス・ツリーの光はやばやと
立冬と共に、このページをと考えて
でも、早いかな、とも‥‥
夕暮れの新横浜で見た、ホテルのイルミネーションの美しさに
やはり、これでと決めていた。
11/8(WED)
山茶花に晴着の支度せかされて
小さめの紅い山茶花が咲き初めて、一本の木が庭を明るくしている。
そうそう、明後日は親戚の結婚式。
11/10(FRI)
綿帽子見えずとも咲み晴れやかに
柔道着の子ら駈けてゆく初しぐれ
小学校の高学年だろう。
稽古を終えたばかりの、上気した顔で。
白帯の柔道着の可愛いさ。
凍鶴や美しかりし叔母のこと
愉しげに黒きマントを羽織るひと
美味しいものを頂いた後は暖かくても
外の風は、夜になれば冷たい。
うかうかと厚手のカーディガンで出掛けていたわたしは寒かったのに
マントで明るい笑顔。
11/18(SAT)
この河の流れふたたび冬の雨
先週は砂地の多い、背の高い枯草が拡がる河原だった。
降りしきる雨に、水嵩もよく見えはしなかったのだけれど。
11/20(MON)
冬茜燃ゆるものわれによしあらば
11/24(FRI)
燃ゆるもの探せば沙羅の冬紅葉
わたしの庭には、満天星の冬紅葉。
花水木の冬紅葉。
散り残ったさるすべりの、これは冬黄葉。
塀の外から覗いている、蔦の冬紅葉。
沙羅の木だって、きれいに紅葉しています。
燃ゆる?‥‥いささかのフィクションです。
ここちよき暖房会話つづくBar
ビルから建て替えて新しくなったお店。
一緒に行ったのは同郷のすこし若いご夫妻。
チーズとチョコレートも美味しくて。
11/28(TUE)
十一月去りゆくゑがほの人もまた
ちさき手に小さきみかん持たせけり
このみかんはね、わたしのせんせいから、おくっていただいたのよ。
ほら、いちばん、ちっちゃいのを、あなたにあげるわ。
12/1(FRI)
なんとなく冬虹の立つ気配して
階段のポインセチアと蓄音機
何時の頃からか我が家にあった蓄音機のお引越し。
十枚ほどあったレコードも一緒に。
古い古いブルースの好きな青年が持って階段を降りて行き、真っ赤なポインセチアがそれを見ていた。
一枚だけ、想い出のあるレコードも‥‥
それは、“Moonlight Serenade”
12/5(TUE)
金色のト音記号も大聖樹
研けよと冬空に銀の月
とても素直なメールをもらって、彼女の明るい笑顔の美しさを想った。
若い真摯さが眩しい。
寒い庭へ出てみると、静かに光る満月。
12/11(MON)
室咲の花へと友の話し振り
名古屋でセントポーリアの集りがあるという。
わたしだって、あの頃はフレームに年中咲かせていたっけ。
そう、もう十年以上も前のこと。
行ってらっしゃい!
楽しんでらっしゃい!
12/12(TUE)
牡蠣船へ板を歩みし女の子
その女の子、わたしなんです。
歳時記でこの季語を見て、思い出すのはそんな、ずぅっとむかしのことなんです。
四国の海のある街の高校生だった頃には、何度も牡蠣船へも行ったのですが
それ以来、牡蠣船を見たこともありませんから。
12/15(FRI)
門松を立てて見直すそのあたり
ねえ、ちょっと立派過ぎますよね。
何年か先に、あの門松に似合うような周辺になればいいよね!
わが家のことでは、ありませんよ。
マンションですので門松は‥‥ね!
12/20(WED)
湯気立てるそれにも電磁調理器で
ありのままです。
室内の乾燥が気になって、鍋物や煮豆のためだけじゃないわ、と。
ええ、快適ですね。
12/23(SAT)
やはらかき雪の色してワンピース
クリスマス・ソングにあはせ手をたたく
12/24(SUN)
あの涙いとほしくなる寅彦忌
「団栗」という随筆がある。
高校の教科書に出ていたそれを、朗読させられた。
途中で読めなくなったわたしは、その春、母を失っていた‥‥
三十一日は寅彦忌。
古い古い半襟の額装が出来て来た。
12/27(WED)
笑顔にて仕事納めの手締かな
乾杯の日本酒で酔うような方ではないのに、ちょっと間違えて‥‥
それで、とても和やかに。
計算してらした?
12/28(THU)
買物も徐々にたのしき年用意
最初に行った花屋がいい!
彩どりゆたかで、明るくて。
松と黄色のカラーを選ぶ、そして万両も。
デパートの食品売場の活気に、わたしもだんだん元気になる。
こういう時には、買い過ぎに気をつけなくちゃ。
12/30(SAT)
大つごもり小さき丹塗りの椀ひとつ
12/31(SUN)