−2002−






立春や小箱のリボン花結び


あした あたし ふたつになるの
せんたくき も おぼえたし 
どういたしまして  も いえちゃう
2月4日(Mon)






重き絵を見き空ははや春光に


カラヴァッジョの絵は、たしかに美しい。
でも、それは僅か七点。

ほかの三十数点は、ひたすらに暗い。
急ぎ足で会場を出た。

丘陵の空は青い。
木々の梢にも春の気配。
2月6日(Wed)






紅梅や睫毛の長き少女ゐて


ふと思い出すひと。
ゆるやかに波打つ髪、白い頬、甘い微笑み。
名前のように静かな話し方。

高校で一緒だった彼女と親しくしていたのは、なぜか琵琶湖のほとりに住んだ頃。
それから、何十年か過ぎて会ったのも琵琶湖。
変らない雰囲気で、やはり美しくて。

2月8日(Fri)






春の闇に聖火灯れり天へ天へ


2月9日(Sat)






ある感動春の銀盤愛の詩


オリンピックのフィギュアで、こんなに感動するなんて!
それも、風邪気味のけだるさに、なんとなく眺めていた画面で。

シンプルな地味な、シャツスタイルのペア。
加速度で燃える表現は、気が付けば「ある愛の詩」の曲に乗って‥‥

ずっと以前の、「ボレロ」の演技も素晴しかったと思い出す。
あれ以来、あれ以上!
2月12日(Tue)






スリッパを購ふすみれ色をした


今朝、ヨーグルトを床にこぼしてしまった。
床は水拭きなどして、いつもよりきれいになったけれど。
わたしのスリッパは、もうダメ。

だから、出掛けた時に新しいの買って‥‥
正しくはすみれの花らしい模様の、かな。

わたし、こんなお値段のスリッパを買ったのは初めて。
春らしい、と思ったから。
それから、もちろん、履き心地がいいから。

ヨーグルトをこぼして、ほんとによかったわ!
2月15日(Fri)






ふたりして小雨二辻春浅し


2月17日(Sun)






絵羽織の背に流したき枝垂梅


北野天満宮で撮ってらした、あられさんの梅シリーズ。
どれも、ハッとするような梅だけれど、特にこの梅!

句を付けていい?
そう訊ねた私に「OK」とのお答えで‥‥


    梅の花をクリックして元の画像を見て下さい。
    そこから、「梅シリーズ」にリンクしています。








−あられさんの梅より−

2月18日(Mon)






沈丁の紅濃しシフォンケーキなど


友達の家の沈丁花は、部屋から見て目線より高い。
そろそろ開きそうなふくらみ。

三人でおしゃべりして、手作りのケーキはコーヒーの味と色。
2月20(Wed)






白魚に透けし向うの遠き日よ


連俳に出した初めの句はこうだった。

  白魚の向ふに透ける遠き日よ

それは自然に浮んだまま。
書いた後でおかしいかな?と。

  白魚の向うに透ける遠き日よ

それから、また、気が付いた。
「透ける」は口語だよ、と。それはそれでいいとしても‥‥

  白魚の透けし向うの遠き日よ

そう替えて。
今、また上記のように。

でも、子供のわたしを思い出すのだから、二番目でもよかったような。
-連俳より-2月21日(Thu)






つたなさや春告鳥の声らしき


きっと、そうよ。

そんな鳴き方をしばらく楽しんでいたら
茶色の大き目の鳥が、さっと飛んで来て、白い侘助の木に止まる。
もう、花はないのに。

春らしい今朝!
2月23日(Sat)






二歩三歩もどる白梅仄けき香


川沿いと公園を歩いてみた。
車を降りて、車の通らない道を歩きたい。
あまりに青い空なので、あたたかい陽射しなので‥‥

石垣の翳に、まだ開き初めたばかりの紅梅と、満開の白梅が数本。
通り過ぎて、その香に気付く。

朱い橋を渡り、茶室の前を通る時、後から聞こえた話し声。
日本語じゃない‥‥追越して行った二人は肩を抱きながら活発に歩いて。
生垣から洩れる琴の音に立ち止まってしまったから、またこちらが先になる。
「ねえ、あれ、テープよ」と言うこともないし。

きっと、彼らには日本情緒あふれるものだったのね。
2月24日(Sun)






陶雛を飾る紅茶の香の店に


お仲間と、隣の街へ。
その市は茶どころ。
でも、目的は紅茶のお店。

素敵なオーナーとは、去年の夏お知り合いになった。
お店のサイトもあり、時にメールのやり取りも。

雛祭も近く、陶製のお雛様がたくさん並んでいた。


2月25日(Mon)






天を恋ふ紫木蓮あり華道展


池坊の歴史も見せる華道展は噂通りだった。
何百年か前の形で活けられた松や枇杷の枝が美しい。
新しい活け方が空しく思えるほど。

中ほどに大きい作品があり、そのスターは紫木蓮。
まだ開きかけたばかりの花も蕾も、空の下で咲きたいと言っているみたい。
2月26日(Tue)






「おめでとう」幼き声の二月尽


はじめて
あたし いいました
ままの おたんじょうび なの
2月28日(Thu)






風光る友は元気な松葉杖


朗らかで行動派の彼女。
退院して、もう、上手に松葉杖で歩いている。
歩くだけではない、事務所への急な階段も登ってしまう。

明るい陽射しの今日、彼女もキラキラしていた。
3月1日(Fri)






公園を過ぎさくら餅四つ買ふ


小さな公園を通って、和菓子屋さんで桜餅を。
そしてそのまま喫茶店へ。
親しいお店のママにお願いして、コーヒで桜餅!

春の陽気。
公園の鈴掛けの木には茶色の実がいっぱい、風に揺れる。
もう、そろそろ花も咲く頃なのに‥‥
3月2(Sut)






雛壇の毛氈となりはなびらは


今になって、山茶花の散り方が盛んで‥‥
窓から見ると、今日は庭の毛氈。
パンジーが内裏雛?

3月3日(Sun)






潮干狩なればと思ひ探しもの


そうじゃないから。
引出しを次々に開けて、いらいらいら。
3月5日Tuet)






うぐひすの歌声透る朝日影



3月6日(Wed)






春愁もすこし話してにこやかに


友達を迎えての夕食。
二人だけでの食事は初めてかもしれないわ。
この字のようなピンクが似合う彼女の、春風のような微笑。
3月8日(Fri)






わが蒔きし思ひがけなき花の種


ホームページを作ってもらうことにしたのは、ちょうど五年前の今頃。
たしか四月の、出来上がった朝の嬉しさを思い出す。

その秋、自分で更新したくなって、さて、何を‥‥
俳句とコメント、そう思い付いて相談し、教えていただき、「俳句メモリー」が始まった。

約五年でカウンターが50000になった今日の、ある感動。
もちろん、自分で開いたのも相当数になるにしても。
見て下さる方々があるから、続いたのだから。

みなさま、そして50000をヒットして下さった小春日和さん、ありがとう!
これからも、どうぞよろしくね。
3月9日(Sat)






三月の美術館へと午後を行く


もう何年になるのかしら。
友達の絵を観に行くたのしみ。
やはり今年も、彼女の絵は魅力を増した。
それは同時に彼女も魅力的になって行くこと。

昨年の、東欧への旅から生れた絵
3月10日(Sun)






やはらかき声なりき花あせび咲く


3月13日(Wed)






ファックスに出て来るお花見案内状


それは三月二十九日とある。
    「春恒例のイベントと言えば『お花見』です。そう、今年もその時期がやって来たのです。
    花粉症の方、冷え性の方も大丈夫!!岡崎城の傍にある巽閣でのお花見です」
いつもになく、軽快なお誘いで。
この暖かさ、きっと桜も咲くでしょうね。
3月15日(Fri)






今頃はケアンズ浅蜊呉れしひと


一昨日のこと。
「小粒だけど美味しいのよ!」と渥美の浅蜊を届けてもらった。
酒蒸しも、浅蜊汁もいい味で‥‥

今日はもう、姉妹で楽しい旅路に。
3月16日(Sat)






ギター歌ふ夜のふらここそんな音


車で一時間のLIVE HOUSEで。

大阪からのギタリストの音が優しい。
ヴォーカルの甘い声とも合う。
“But not for me”など。

ワン・ステージで帰るのが惜しかった‥‥
3月17日(Sun)






霾や木々の中なる天守閣


花粉、花粉と言うばかりだったけれど、もう黄砂。
わたしはこの方が気になる。

今日午後からは、はっきりそうだと思った。
黄砂は「つちふる」とも。
3月18日(Mon)






夕霞赤穂御崎は波高し


3月19日(Tue)






童心で路面見詰むる春の宵


松山には大街道という繁華街がある。
その道の真中に大きな銅版が‥‥
とってもむかしの地図。
でも、今もある店だって、覚えている場所だって!
「わたし、この病院へ入院したことがあるわ」

翌日友人に話したら、知らないと。
つい最近に出来たものらしい。
3月20日(Wed)






松山城ふもとのさくら望む窓


萬翆荘という古い洋館の桜を見下ろす窓辺。
三分咲きくらい。
-連俳より-3月21日(Thu)






黄水仙もう九十よと笑まふ叔母


八十八で初めての海外旅行へ行った彼女。
それもカナダ!

「お茶でも」と言いながら、用意をし、「あんた、お点て」と。
「今度、お謡、聞かせたいね」そう言ってもいた。

とっても、かなわない‥‥

今夜はうんと若い叔父達と食事をし、遅くまで話して。
3月22日(Fri)






春風の笑顔両手に大荷物


山の桜を眺めながら、内子へ寄り、生れた街八幡浜を通り、伊予の南の海辺の町へ。
三瓶湾を見下すペンションに着いてひと息ついた頃、彼女は現れた。
小柄なのに、両手に二人の坊やを抱いて!

ほんとうは北風の強い午後だったけれど、やっぱり、fuさんは春風。

それからそれからと、いろんなことが楽しく続いた日。

食べ物に限って言えば‥‥
先ず、ペンションの主ご自慢のオーディオ・ルームで、サウンド付きのコーヒー。
なつかしい先生の奥様のレモン・シフォンケーキ。
fuさんの恋人に釣り上げられた鯵の、刺身!塩焼き!
fuさんが育てたハーブのケーキ。
夜中に再び、ステキなサウンド付きのコーヒー。

3月23日(Sat)






三瓶湾は弥生満ち潮日の出前

天と水と風動くとき朝霞



3月24日(Sun)






花の雨砂利踏む音もやはらかく


古い壊れそうな建物と思うから、コートまで持って行ったのに。
この春、改築されたばかりの市営の会場は、美しく趣があって驚いてしまった。
窓からの、間近い天守閣が光に浮き出て‥‥どうしてデジカメ持って来なかったのかしら!

屋台も開いていない、人通りも少ない公園。
雨夜の花見も、素敵です。
3月29日(Fri)






なにがなしうれしきことの四月には




4月1日(Mon)






れんぎょうの色のTシャツ買ひしけふ


昨日から初夏の気温。
家に居ると長袖のTシャツが丁度いいけれど、去年はやたらと安いのを求めて、もう着たくはない。
出掛けた街で、二枚選んだのは、ブルーや黄色のボーダー柄と、黄色の無地。

いま、着ているのは、花模様のブラウス。
rosetteさんからのプレゼント♪
これは、ほんとうに大切に着なければ。

rosseteさんの夢だったWeb Shop「森のシャツ屋さん」が、本格的に始動したみたい。
おんなじ形のブラウスが出ていた‥‥気が付いた時はもうSoldだったけれど。
夏には、本当に八ヶ岳にお店が出来る!
4月3日(Wed)






春光や母去りましし日は遥か


4月4日(Thu)






満天星の花に小雨の夜の宴


今朝の庭に、どうだんつつじの花が、白く揺れていた。
数日前からちらちらと咲き始めていたけれど‥‥

この日に咲いたことが、うれしい。
4月6日(Sat)






年の数ほどふるさとの薔薇の花


昨日はわたしの誕生日。
“Happy Birthday to You♪”の幼い歌と一緒の花束。
友達からの淡いピンクの蘭の鉢。
前の日には花ではない素敵なプレゼントも。

それから、この薔薇は遠く松山から。

今朝、その人にメールでお礼を出した。
何気なく書き込んだこの句。

わたし、幾つかしら‥‥
花瓶に活けた花を数えて、おどろいた!

なんと、なんと
ミニ薔薇は蕾も入れると100を越しそう!!!

4月7日(Sun)






レタス洗ふわたくしだけの夕食に


4月8日(Mon)






あの笑顔浮ぶ声してげんげ畑


久しぶりの電話。
明るい話し方は変らない。

ぱあ〜っと拡がる紫雲英の色。
4月9日(Tue)






春愁にやさし初咲き白き花



4月8日(Mon)






程のよき手応へ白き春笋の


「朝掘りのを茹でたから、持ってくわ!」
包みを開けるといい匂い。

今夜は筍の煮物と、筍御飯と‥‥
4月12日(Fri)






浅蜊鳴くあの冷された庫の中に


昨日、夜になって届けて頂いた渥美の浅蜊を、冷蔵庫へ。
冷た過ぎてもと思うから、わたしは野菜の引出しへ入れる。
一晩だけだもの、流しでボウルに入れてとも、ちらと‥‥

そうすれば、あの貝の動く気配も感じられたのに。
買って来れば直ぐに冷蔵庫へ入れる癖が、いつから付いたのだろう。
あの美味しい美しい浅蜊は入れなければよかった。


-ほら、こんなに美しい-

4月13日(Sat)






人形のブロンド洗ふ春の昼


どうして家にあるのか、はっきりしないけれど、可愛い顔の人形。
見付けてくれたのはいいとして、思いっきり埃で汚れている。

三つ編みにした髪をほどき、洗面台でお風呂に入れた。
ピカピカに綺麗になって、毛糸のドレスの代りにハンカチーフでスカートとボレロを。

どうやら、わたしが遊んでいた‥‥ら・し・い。
4月15日(Mon)






緋毛氈都をどりへ踏みゆけり


あの日、枝垂れ桜と春雨の中、彼女の傘も赤だった。
写真を出して見なくても、あの傘の色は鮮やかに浮んでくる。
4月17日(Wed)






木綿糸わすれなぐさの色の糸


人形のブロンドの髪を切った。
三つ編みがきれいに出来ないので、水色のリボンでくくって、ちょうどいい長さに。

彼女のために夏のドレスを編んでいる。
ひと玉のレース糸を見つけたから。
4月19日(Fri)






春風や露地に葉ずれの音渡り


蕗の花。
うす紅の満天星。
名は知らない蔦。
‥‥‥
‥‥‥
和の庭の美しさ。



それから、「春風ヴァリエーションT」
    春風に乗りて過ぎ行くETC
4月20日(Sat)






ヴィブラフォーン似合ふゆらぎや白つつじ



4月22日(Mon)






病棟の屋上春風追ひかける


うすみどりの小高い山に囲まれた病院へ、お見舞に。
たいくつしている幼い子を連れて屋上へ出てみる。
広いことが嬉しそうで、飛んで来た二羽の鳩も、ともだちのようで‥‥
4月24日(Wed)






陽炎の向うの硝子にゐるわたし


ショーウィンドウに映ったわたし。

はっきり見えないから、いいんです。

ちょっとステキなジャケット買いました。
4月26日(Fri)






ふうせんのゆらゆらももいろ見上げる子


-連俳より-4月27日(Sat)






白き峰空に桜は地を染めて


この季節には初めて訪れた蓼科は、満開の桜!
中央高速道から見た残雪の山。
八ヶ岳の頂にも残雪。

そして、冷え込んだ夜空には丸い月まで。
4月28日(Sun)






春灯もほのぼの今宵わが宿の


インターネットで見付けて申し込んだペンションは、なんとも可愛くて!
夕方に戻れば、その窓の灯の、門灯の、やさしいこと。

それから、特別メニューは山菜の天婦羅!
ステキなオーナーとお嬢さんが摘んでらした、たらの芽、蕗の薹、こごみ、など。
4月29日(Mon)






囀りや白樺梢に赤き鳥


「居ながらにしてバードウォッチングなんですよ!」と、彼女は話す。
デジカメでの撮り方も。

赤と黒の美しい鳥が、ちょうど現れた!

林の梢を望むその部屋で、わたし達三人はどれだけ話したことだろう。
夢を持つ二人の妹が、この町に出来たような‥‥

で、一番頼りないのが、わたし、かな。
4月30日(Tue)






花林檎微笑のひとに逢ひて来し






白い花ではなくて、淡いピンクの花は、
きのう、初めて逢ったひとに似ていた。

ブルーが好きなひとなのに‥‥
5月1日(Wed)






夏近しヘッドフォーンにJAZZ走る


新しい市の施設で、親しい写真家の個展があるからと出掛けた。
わたしがこの街へ越して来た頃かな、そう思える駅の近くの町並がテーマ。

そのあと、有名なドクターのコレクションを聴くコーナーへ。
10枚のCDから選んで聴くようになっている。
聴いているだけではと、本を持って来る。
「男と女とジャズと」という詩集があった、ジャン・ポール・アイカワという人のもの。
ジャズを聴きながら書いた詩とか。
“ワルツ・フォー・デビィ”“A列車”など。
“ブルー・モンク”というのをメモして来た。

CDは、一曲か二曲ずつ5枚ほど聴いたと思う。
わたしはヘッドフォーンはもともと苦手。
渡辺貞夫の「My Dear Life」‥‥これはいいな。
5月3日(Fri)






あの家は男児三人や鯉幟


少しだけ郊外へドライヴ。
勢いよく芽吹いた緑の山に囲まれた町。
青空の下、あちこちに鯉幟が泳ぐ。

中には十匹ほどの家も。
きっと、坊やが二人か三人居るのよね。

    鯉幟は夏の季語。
    でも、今日は五月五日、明日が立夏。
    五月五日が立夏の年もあるから‥‥
5月5日(Sun)