−2002−






閉め忘れし窓より夏の朝の風


今日から夏なのだ!

そういう思いと、今年ももう夏になった‥‥との嘆息と。

ともあれ、小さな庭はもう完全に夏支度をしている。
午後のお出掛けには、若葉のような色のスーツを着よう。
5月6日(Mon)






目高飼ふことの誘惑午後の風


涼しげな水と、メダカの動きと‥‥
友達からのメールを読みながら、目に浮んだ。

    「空になった壷が、わびしくて、とうとう買って来ました。
    炭を入れてホテイアオイを入れて、たかがメダカですが、可愛いのです。
    朝歩く前に覗いて出かけるのが、日課でしたから、復活です。
    おかしいでしょう?」

おかしい、なんて!
わたしも飼ってみようかな、そんな気になりましたよ。
5月8日(Wed)






雨の日の話し相手は水羊羹


5月10日(Fri)






久々の纏り絎けなど額の花


丈を直すものがあって、針を持つ。

とても億劫だったのに‥‥
始めてみれば、なんともリズミカルな指の動きなんですよねぇ。
ええ、キーを打つより規則的な!
5月11日(Sat)






母の日は母であることその自足


5月12日(Sun)






葉の中に沙羅つぼみひとつまたひとつ


あらっと気付いたうれしさ。
目線にはひとつ。

高くなるほど、つぼみの数は多くて。

5月13日(Mon)






歯科の窓銀杏若葉は揺れ揺れて


嫌いなんです。
分ってはもらえないほど嫌い。

きっと、これは異常です。
5月15日(Wed)






新樹光イタリアへ行くと言ふ電話


行ってらっしゃい。
楽しんでらっしゃい。
5月16日(Thu)






なつかしき想ひ兆せり麦の秋


その麦畑が山に近かったから。
そして川沿いだったから。

いつか、今日も、懐かしい日となるのかもしれない。
5月17日(Fri)






誘蛾灯ピアノマンの指輪歌ひをり


ふらっと隣の街のライヴハウスへ。
周辺は田園。
だから誘蛾灯、というわけでもないのですが。

右手小指の銀色の指輪が、キラキラ光って。
小指だけで弾いているような気がして。

スローな曲が多かったけれど、速い動きの方が綺麗でした。
5月19日(Sun)






飛魚を好みしわれら新所帯


歳時記で目に入ったのが「飛魚」
あの細くて薄い青の色、長い胸鰭‥‥

むかし、三井寺の魚屋で、よく買っていた。
そう、あの飛魚しか、まあまあ新しい海の魚はなかったのだから。
塩焼にした飛魚は、脂も少なく、パサパサした白い身だった。

時に、京都の錦へ行くことがなかったら、わたしは四国へ帰ったのかも。

今、もし店頭で飛魚を見付けたら、どうするかしら?
「あら!」
そう思うだけ。
懐かしくても、そうに違いない。
5月21日(Tue)






うちゅくしきあおきどなうと若葉風


5月22日(Wed)






あぢさゐは頬より紅を刷きそめし


もとの木より、日当りがいいのかしら。
数年前に、夏の間花瓶に活けて根が出た葉を、植えた木。
今年は七つの花を付けていて、一番大きな花は、お化粧をし始めた。
5月23日(Thu)






夢を追ふなぞなぞ遊び蛍の灯


急に、蛍狩に誘われて。
山間の水田と谷川に、中空に、早い蛍が舞う。

思いがけなかったから、
蛍もまだ多くはないから、
不思議な世界へ迷い込んだような気がした。
5月24日(Fri)






“Meditation”ボサノヴァ初夏の月白し


ベースが響くピアノトリオ。
散歩の気分で行ったライヴ。

書きながら“Meditation”が気にかかる。
5月25日(Sat)






気だるさの午後には青き水中花


長い間見たことがありません、水中花。
あ、プラスチックのはありますね。

でも、あれはダメ。
やはり紙で作られたのがほしいです。
5月27日(Mon)






その姿たしかに初夏のつばくらめ


わたし、“ラ・ゴロンドリーナ”を口ずさんでいました。
メロディーだけをマンドリンの音で奏いてみました。

もう一つ、聞こえて来る曲があります。
「つばくらめ 帰り来りて‥‥」
そう、あなたの作った歌です。
5月29日(Wed)






そら豆の青き香母になりしとふ


嬉しいメールをもらった。
三月に女の子のママになったという彼女は、あつこちゃんのおねえさんのような人だった。

あれから何年が過ぎたのかしら?

写真のベビーは、Peterのブルーの毛布で眠っている‥‥
5月30日(Thu)






白き花いくつ五月の雨の朝


沙羅の花。

窓に近い木に咲いたけれど、今年の花は少なくて小さいような。
その代り、庭の隅の木にはつぼみが多い。
写すのは少し待った方がよさそう‥‥
5月31日(Eri)






江戸時代風の穴子の料理かな


穴子の照り焼きと葱と木耳の餡かけ汁。

そういう料理を隣の街まで戴きに。
どれも素朴な味。
6月1日(Sat)







繍鞠花どこか面差し似通ふ子


6月2日(Sun)






葉裏より出で舞ふ白き夏の蝶


芝生も紫陽花も水を欲しげな夕方の水遣り。
しぶきに誘われたように現れた蝶が、くるくると舞い続けていた。
-連俳より-6月3日(Mon)






真夏日や歯科医の椅子の高きこと


モチロンのこと、心理的なもので‥‥

こんなに暑いから、ドキドキするような沙羅の花には逢えなくて。
違うところでドキドキする、なんて!
6月5日(Wed)






姫沙羅のささやき風に消されけり



6月7日(Fri)






蛍火に誘はれつつ奥へ奥へ

華やげる舞踏会とも恋蛍

樹々の闇に光ひろごり蛍沢


6月8日(Sat)






ウクレレのメロディー響き梅雨に入る


ふと取り出して掛けたCDの、「バリ・ハイ」から始まるウクレレの音の美しいこと!
「引き潮」も「ララのテーマ」も、どれも好き。
1987年のものでした。

わたし、今日はじめて聴いたのですよ。
トレモロの甘いこと‥‥リズム楽器じゃないわ!
6月11日(Tuei)






枇杷の実や優しき動き母の指

いただいた枇杷の実の絵を眺めていたら
‥‥ふっと幼いわたしに。
6月12日(Wed)






青き線の中に浮き立つ白鷺よ


田園地帯を走るバス。
午後の眠りを誘う揺れの中で、窓外を眺めていると‥‥

水田に、はっとするほどの白鷺の一羽。
午前中に見た、陶製の白鳥のようだけれど、かすかに動きあることでそれよりも美しく。

6月13日(Thu)






サッカーや蕗切りながら茹でながら

だから、最初の一点は入れるところを見逃して!
6月14日(Fri)






逢ふのかもこの真夜中にあぶらむし


だから起きていてはいけません。

あぶらむしなら、まだいいの。

この湿度。
換気扇から、なぜか、むかでが訪ねて来ることがありますから。
6月16日(Sun)






アマリリスまさしく彼女の誕生会

二次会に行ったお店で、誕生祝のグループに会った。
主役は知合いの、宝塚の男役スターにもなれたかもしれない、そんな長身の華やかなひと。
だいぶん年下の彼女に、わたしはYuちゃんと呼ばれている‥‥
なぜだろう、そう思いながら、ま、いっか、となってしまう不思議なひと。
6月19日(Wed)






長電話など梅雨冷の宵ゆゑに


6月20日(Thu)






水盤に花を活けたし青き花


ふとそんなことを思う午後。

水盤‥‥今、わが家にはない。
生け花なんてむかしむかしに習っただけ。

涼しさの演出には、あれはいい。

室内で30度もあるから?
サッカーの試合が得点しないまま、もう、うっとうしくなったから?
だって、あの、画面の赤い色!
わたしは、見るの止しました。
6月22日(Sat)






水槽に浮きしトマトは七つほど


冷蔵庫から出したトマトを切る。
切りながら思ったのは、弾けそうに冷されていたむかしのトマト。
ことに美味しかった、夏休みの祖母のトマト。
6月24日(Mon)






百合にほふや宝塚その舞台にも


誘われたけれどお断りして。
でも、お仲間の賑やかそうなバスの中を思ったり。
華やかなステージをちらと懐かしんだり。

そんな日の午後、あられさんのこんなカサブランカには、!!!  

‥‥大きい画像を見て下さいね。           








      
      
6月25日(Tue)






ゆきのしたの可憐さ今は思ふなり


6月28日(Fri)






さみだるる中華料理店朱き門


梅雨の夜には中華料理が似合う。

おなじことを、日本料理でもわたしは言うのだろう。
でも、イタリアンでは、決して思いもしない‥‥きっと、たぶん。
6月29日(Sat)






七月の愉しきことの先づひとつ


もうすぐ十一時なのに電話。
何だろうと思えば、数日後の打ち合わせ。

こういうこと、好きなんですよね。
7月1日(Mon)






緑蔭に渡る風かとあの響


静かなのに鮮やかで。
激しくてもなぜか爽やか。

言い表せないけれど、彼、八城クンの音が好き!

“Caravan”のドラムソロを句にすれば、こうかしら。

7月4日(Thu)






暫くをゆだねる音の滝飛沫


昨日におなじく♪
-連俳より-7月5日(Fri)






献身といふ言葉あり花萱草


ラヴェルの「左手の為のピアノ協奏曲」
映像を観ていたから惹かれた。
鍵盤を駆け巡る左手。
人差し指と中指のテーピングが目を引く。
そして、動かされない右腕。


7月7日(Sun)






この午後はアイスクリーム珈琲味


それで少し暑さを忘れて。

ぼんやり考える‥‥ちぇっく、すぱいらる、たーん・あうと‥‥それからなんだっけ?

それにしても、このアイスクリーム、おいしい!
Glico「食後のアイス」の「エスプレッソ&マカダミア」
7月9日(Tue)






新しきハンカチ三枚憂さ晴らし




世の中台風が来てますしね。
7月10日(Wed)






青空に若葉の光ゆれるゆれる


台風は過ぎて。
二つ残っていた紫陽花を剪り、ふと見上げた空に南天の若葉が光っていた。

上手に撮れる自信はないけれど、とにかくデジカメを。
眩しいから、余計に写し難い。
7月11日(Thu)






水満々花火桟敷は組まれをり


7月14日(Sun)






先づ車置き行く話さてビール


女ばかりの集りにもそうなる車の多い街。
乾杯がウーロン茶で、なんて、初めてだわ。
7月16日(Tue)






金亀子のブローチつけよかつけまいか


ガラス製だから、涼しげ。
でもねえ、こんなに蒸暑いと、なんにも付けたくないと思ってしまう。

出先で偶然会った友達は、レモン色の花柄のツーピース。
爽やかで明るくて、いいな。
7月18日(Thu)






五切れの鱧へ塗箸覚醒す


7月20日(Sat)






白き花の仄けきかをり盛夏来る


梅雨が明けたのは昨日。
とたんに真夏の暑さ!

数日前から、小さな白い蕾が目に付いていた。
金柑の花が咲いた。

7月21日(Sun)






今朝もまたBGMは蝉時雨


窓を開けると、とたんに降りそそぐ。

梅雨明けと同時に、今年の蝉はとても元気がいい。
BGMといったヴォリュームでは、ないけれど‥‥
7月23日(Tue)






濡れ縁に光る素早し青蜥蜴


今朝の蜥蜴は、20センチほどはあった。

‥‥あの時のトカゲチャン、かしら?

五年前に「俳句メモリー」を書こうとして、最初のモデルが虹色に光る小さなトカゲ。
5センチあるかなしかの、かわいいトカゲチャンだった。
九月から始めたので、その句は入れなかった。

その句とコメント、どこかにあるはずなのに、見当らない。

五年ぶりに、遊びに来た、そんな気がしてならなかった。
7月24日(Wed)






涼風や自転車で行く笑ひ顔


「は〜い、おまたせ!」
そんな感じで彼女はプレゼントを。

ほんとにステキなTシャツ!

キキさん、よろしければ作りますって♪
あ、でも彼女は明日からちょっと韓国へ行くそうですから‥‥そのあとで。


        Knock Please♪
7月25日(Thu)






落し文絵はがき二枚選ぶ午後


暑い日だから、涼しげな絵葉書を。
「をさなご」にヨワイ方だから、これがいいわ。
シリーズだから、二枚つづきで。

‥‥そう、トン子さんへ切手を貼ったMailを出しました。
7月28日(Sun)






口紅を購う程よき冷房に


お気に入りの色のをと思っていたのが、生産中止。
それに近い色を探してもらう。

少し幼い感じだったのに、急におとなの雰囲気を持って来たスタッフ。
POSシステムのノート・パソコンに「困ります」と言っていたのはこの春、もう平気な動き。
それに、どんどん美しくなって行く。
7月29日(Mon)






夏休み垣根を越えて飛んで来た


垣根の向う側は私道。
それも、ちょうど一階分くらい下になる。
ふわふわ、楽しげにシャボン玉が飛んで来た!
あれ?と思う間に幾つも幾つも光ってる。

暑いけれど窓を開けると、幼い声も重なって流れて来る‥‥

そう、そろそろ水を遣らなければ。
7月30日(Tue)






炎暑なり白き封筒恩師より


ペン書きの封書から、A4の白い紙。
初めて頂いた Word での手紙!
一瞬、涼しい風が吹いたような。

最後にはメールアドレスも記してあった。
これから、わたしも初めてのEメールを書く。
7月31日(Wed)






海見れば嬉し真夏の三河湾


外気温36度。
そのせいか、車の流れはノロノロで。

でも、この景色を見たら‥‥

8月2日(Fri)






ミッキー・マウス・マーチ歌って遠花火


ベランダに吹く風は涼しい。
あら、あんな邪魔になる樹はなかったのに‥‥
おばあちゃまと見たのは、もう何年前なのかしら。

‥‥おばあちゃま!
こんなにうれしそうな、おんなの子。
あなたの孫とわたしの孫と、花火を見てますよ。
8月3日(Sat)






夕暮れの電話明るし秋を待つ


最高気温28度までというところへ行くひと。
そこは春なのかしら?

もうっ‥‥!

今日の気温は38.2度と出ていたテレビ。

でも、もう直ぐ秋。
名のみでも秋。
8月6日(Tue)