爽涼や生れるあたり白樺の
名古屋から「しなの」で塩尻まで。
ゆれる‥‥立てば目眩がしそうな横揺れ。
でも、満席に近くてグリーン車!
木曽福島に着く頃、数列前の席から立ち上がった人、あら、知ってる‥‥だぁれ?
友達の肩をつついて、「ほら」と小声で言ったとたんに思い出した。
「川津佑介よ」
都会的で優しそうな、オクサマ、でした。
塩尻で乗り換え。
あらららら、グリーン車はホームの端に止まり、階段まで一番遠い!
登って降りて、「あずさ」に。
茅野へ着いた時は、けっこう暑く、「どうしたの?」とタクシーのドライバーに聞いてしまう。
「そうなんですよ、今年はクーラーを入れる家が多くてね」
それでも、四時ともなれば、ホテルの庭からの風が違って来る。
あの、ひんやりとした懐かしい涼風!
8月9日(木)
蒸し焼の玉蜀黍に歓声が
落鮎と言へぬ美味なり鬼怒川の
「肉骨茶」の香を秋風に別荘地
というような、涼しいガーデンパーティーの賑やかな夜でした。
8月10日(金)
落葉松に雨の初秋や小さき旅
一緒に来た友達は、帰って行きました。
二人で早めに採った昼食は、ホテル「ハイジ」のテラスで。
ローストビーフ・サンドイッチとアールグレイ。
8月11日(土)
霧白く落葉松の幹つつむ時
霧の朝。
「乳色の霧」という表現はだれの詩だったのか‥‥
ハンドフォン青き秋空想ひつつ
八ヶ岳の麓へ住いを移されたrosetteさん。
逢うつもりだったけれど‥‥
どうにかメールで連絡が取れて、携帯電話の番号を教えてもらい
山道をドライヴ中の彼女と、はじめて話す。
わたしはホテルの庭の、白樺の木のそば。
曇り日に、話しながら想い描くのは、青い空!
空色が大好きなrosetteさんだから。
高原の夜道走れば霧流る
霧白き車道を淡き光かな
親しいご家族と一緒に食事を。
帰りには、夫人の運転で、わたしは助手席。
深い霧の中へ、次々にヘッドライトが広がる。
落葉松に囲まれた道はカーヴが多く、曲るたびに変化する光が幻想的。
8月12日(日)
コスモスの風がわたしの横をゆく
ここでも、今年は早く花が咲いてしまって、写すのにベストではない。
池のほとりのコスモス畑にも咲き終ったのが多いけれど
風に揺れる花は葉は、とてもやさしい。
パンプキン・スープとネットの友達と
KAYOさんが昨夜こちらへ。
今朝の約束通りに、「ガムラスタン」という北欧料理の店で夕食を。
8月13日(月)
窓辺よりお帰りなさいとつくつくし
わが家にも秋の気配がしていました。
暑さは厳しくても、帰って窓を開けたら、秋の蝉の声!
それに、TOPに載せた竹が、一週間でずいぶん伸びていたのです。
8月14日(火)
木の実独楽をさなどうしの合ことば
初対面の、二歳半と一歳半の男の子と女の子。
大人にはわからない言葉があるようで、いつの間にやら遊んでいる。
男の子はオニイチャンらしい仕草も見せたりして。
8月18日(土)
颱風の近づくなぜか所在なし
最初の予報とちがって、このあたりも台風圏に入るらしい。
そのつもりになってはいても、スピードのない今度の台風だ。
テレビを消せば、ほんとうに来るのかしら、などと。
マンションに移り住んでからは、家に居れば不安はないから。
ニオイバンマツリなどの鉢は朝から部屋に入れてあるし。
子供達が小さい頃は、木造の、川のそばの家で怖かった。
東西南北どちらからの風も直撃だった。
テラスの屋根が飛んでしまったこともあったし‥‥そんなことを思い出している。
8月21日(火)
両の掌にくるめる林檎自然派の
ねえ、林檎の下のレース、わたしが20才の頃に編んだものなんですよ。
おばあちゃまの箪笥の中で見つけ、洗って漂白して。編んだ時と同じです。
8月23日(木)
ランニング・ベースは秋の夜の音
ヴォーカリストも秋のムードの歌い方。
ピアノは優しくて。
ドラムスは抑えて。
なぜか、今夜はベースの音が好きだった。
8月26日(日)
りんごみてももといへるこももがすき
どちらが季語?
どちらも、いいことにしてください。
まだそんなに紅くはないりんごでした。
8月27日(月)
白きまろき花に分け入り秋の蜂
まだまだ咲きつづけるさるすべり。
台風のあと、闌れた様子だったのに、また花盛りの風情を見せている。
暑い昼なかに、蜂が来る。
ぶんぶんぶん はちがとぶ
おいけのまわりに のばらがさいたよ
ぶんぶんぶん はちがとぶ
夕方、あの子は初めてわたしを呼んだ。
「オバアチャン!」
「ねえ、ユッコチャンと呼んでね」
などと言っていたけれど
「グーマー」と、トン子さんとは決めていたけれど
「オバアチャン!」が一番キラキラと聞えた。
8月28日(火)
ひとときを秋草のある画廊にて
ひと月ほど前のこと、彼女は言った。
今度の作品の題をわたしに付けてほしいと。
完成近い絵を見せてもらった時、黄葉の色が好きだったから‥‥
今日の彼女は、何処で見るよりも活き々々としていた。
ミニ画廊へどうぞ♪
8月29日(水)
鈴虫や窓を閉めよか閉めまいか
今朝の風は涼しいのを通り越して、あわてて着替えたほど。
それで、鈴虫も鳴きはじめたのかしら。
夕御飯前に、エアコン入れたいと思っても、虫の音に窓を閉めるのをためらう。
でもねえ、この蒸暑さでは‥‥
やっぱり閉めよう!
明日から九月。
書き始めてから四年になる。
「四」よりは「五」の方が好きだから、あと一年はつづけるのかな?
迷うことは楽しいのかも。
8月31日(金)
あの頃の無花果の実は小さかり
小学生の頃の家には無花果の木があった。
裏口が玄関のように、みんなが出入りしていたけれど
ほんとうの玄関の塀のそばに、その実は生った。
夕方買て来た無花果もそう、この頃のは見事に大きな実。
今のわたしの手に載せたとしたら、あの庭の無花果はきっと、とてもかわいい。
fuさん、その家はあなたの町にありましたよ。
9月1日(土)
箱の中に葡萄の房は豊かなり
毎年送っていただく南信州の葡萄。
箱を開ければ、その香りとともに美しい葡萄が!
「ぶ・ど・う」‥‥、こぼれたひと粒をつまもうとする小さな指。
9月2日(日)
飛蝗の子いづこで胸にとまりしや
玄関を入り、壁の鏡を見る。
あら、なんだろう、この緑色の。
葉っぱかな?
でも、こんなに細い葉は‥‥
よく見れば、3センチほどのバッタ!
かわいいブローチ!
昨夜、わたしは松山の友達と相当の長電話。
松山‥‥「坊っちゃん」‥‥バッタの話がありましたねぇ。
9月3日(月)
赤きまた緑色濃き唐辛子
赤い唐辛子を左右に四本ずつ、そして上に緑を三本、放射状に並べて。
その真中に、唐辛子の白い花が数輪。
花は夏に咲くのだから合成写真なのかしら?
「ヴェジタブル・フラワー」と題した写真展の案内状に。
写真家の彼女は、もう随分前からそのテーマで撮っている。
はっきりしていて行動的なひとなのに
作品を見る時、野菜の花で遊んでいる少女の視線を感じるのは、わたしだけ?
来週、名古屋へ行ってみよう。
9月5日(水)
アクリル板の愛らしき絵に秋の虹
ちょっとしたお付き合いで、隣の街へ絵を見に。
絵は水森亜土の。
それから、彼女のお絵描きデモ。
ん?と思いながら行ったのに、なんだか、だんだん楽しくなる。
とっても不思議だったのは、幼いファンが居ること。
亜土ちゃんといっしょにジェスチャーをしている、2才くらいの坊や!
わたしは“Paper Moon”が好きだった。
綾戸智絵ほどではないけれど、弾んで歌っていた。
9月9日(日)
野分あと庭へと白き花の鉢
山並は色深めたり秋の天
9月12日(水)
礼状の葡萄の絵には力有り
ひとときをちさきしあはせ初さんま
9月13日(木)
秋雨や三河木綿の肌やさし
柿渋に惹かれし人は京育ち
木綿地に秋思を染めて貝紫
9月14日(金)
つまべにや絵本のやうに繰る雑誌
鳳仙花はなつかしさを誘う。
やさしい花で爪を染めたことはないけれど
あの実に指を触れて弾けるのを待つ、たのしい遊び。
それにしても、この雑誌、お化粧のページの多いこと!
アイライン、アイシャドウ‥‥エステにマニキュア。
そして、そして、盛りだくさんのスーパー・ブランドの広告。
楽しくて、いいじゃない!
俳句だけを書こうと思った、わたしの三日坊主。
普通に暮そう‥‥ね。
9月16日(日)
今宵わが厨に酢橘の香は立てり
すだち は徳島で採れる。
送ってもらったのは、松山の人。
胡瓜と白子と若布の酢の物に、すだちを絞って。
「くりや」‥‥ねえ。
使ったことのないことば。
そうも思ったのですが、サラダではありませんしぃ‥‥
秋茄子の鴫焼きふるさとの味噌で
今夜のもうひとつのメニューです。
メイン?
それはね、鮎魚女の煮付け。
9月17日(月)
糸瓜忌や松山城の絵を待つと
松山城を描いた一枚の絵がある。
もう、何十年か前のもので、その風景は実に のどか。
それを見た知人がやはり同郷で、「お城の絵がほしい」と。
わたしの友人の世話で、ある画家に描いてもらうことになり、どうやら出来上ったらしい。
発端になった絵が見たいということだったので、写して送ったのは春の頃だったと思う。
今度の絵はどんなのだろう。
こんな畑などはなくて、ビルの多い街と城山には違いないけれど。
(大きい絵もありますよ)
−連俳より− 9月19日(水)
たたかひの映画を出れば夕月夜
「コレリ大尉のマンドリン」
マンドリンとニコラス・ケイジで、行くと決めた。
まあ、あんなに戦乱のシーンが多いとは‥‥
それも謀略の。
だから、恋人に捧げるマンドリンの曲が、そのシーンが素敵で。
ラストに流れるその曲の歌声も美しくて。
郊外の「コロナワールド」だから、遮るもののない広い空には、上弦の月!
9月22日(土)
秋風に揺れてむらさき見え隠れ
式部草は、庭の南西の隅にある。
花が咲いても、いつも気付くのがおそくなる。
紫の実を写そうにも、山茶花と満天星の木が通せんぼをして、そばには寄れないし‥‥
なつかしき薄き歌集栗ゆでながら
歌集は「瞼の渦」という。
小さな古い私家本。
9月25日(火)
すすきの穂光るから五本抜いてしまう
矢作川のそばへ行った。
刈り残してある稲穂の黄金色もうつくしい。
葛の葉も延びている。
でも、午後の陽射しに金銀に光って風に靡いているすすき!
ほしくなって、でも手を切っては困るし。
そうよね、これってすぅ〜っと抜けるんだったわ。
9月26日(水)
あかいこのみけさのあいさつ「こんにちは〜♪」
木斛(モッコク)の実。
今年はとても早く紅くなった。
昨年はたしか、あつこちゃんの結婚式の前だったから、十月の後半。
9月28日(金)
待宵の雨にかそけき香ぞ来る
雨の夜、月はその雨雲の上。
それでも、庭へ出てみると‥‥
金木犀のほのかな匂いが漂う。
今朝写したあの蕾かしら?
9月30日(日)
出でたれば立待の月高く在り
秋の趣向をこらした日本料理に、菊姫の名の冷酒を選び、
女どうしのお喋りをたのしんで店を出たら‥‥
寝待月の光は射すや音楽堂
微かな赤いスポットライトの下で、弦が響く。
ステージの背後のパイプオルガンが淡く光って、月光に照らされたよう。
静かな曲では、ジプシーの単調なメロディーに誘われて、ねむってもいたらしい‥‥
ハンガリー生れのラカトッシュとそのアンサンブルは、とても繊細な音を出す。
活き々々していたのはアンコールの「ハンガリアン舞曲」
今しがた庭へ出てみたら、朧月。
もう、十一時過ぎ。
10月5日(金)
ひたすらに撮りて二十年花茗荷
友達の出版記念パーティー。
先月、個展も催された「ヴェジタブル・フラワーズ」
会場には作品も並んでいた。
茗荷の花は漆黒の背景に浮んで凛とした美しさ。
わたしが一番好きだったのは、チコリの花の写真。
白い靄に包まれた小さな薄むらさきの花。
「チコリの戯れ」と題されていた。
10月6日(土)
木犀の花の香乗せて朝の風
早くに玄関のドアを開けた時。
きっとお向いの庭の金木犀からでしょう。
わたしの庭の金木犀も真っ盛りになっています。
‥‥TOPの写真替えました。
10月8日(月)
コスモスや歓声上げて騎馬戦に
騎馬戦はビデオの中。
みんなに見せながらの歓声は、とってもキュートなママ、というか、ダンスのセンセイ。
見ていたわたしは、またあの句を思い出していた。
今日の騎馬戦の坊やは騎馬の先頭。
ねえ、「体育の日」はやはり明日がいいですよね。
10月9日(火)
銀杏に注意と立札津和野にて
焼き上がった銀杏に軽く塩をふって食べながら、大きな樹を思い出していた。
何年も前の津和野。
どこか、小さな美術館だった。
「実が落ちれば衣服を汚します」
そう書いてあるので、余計に見上げたりして。
10月11日(木)
万両の実青し布団たたく音
青い実も瑞々しい美しさ。
今年は特にたくさんの青い実を付けているような。
少し離れたところからは、葉の緑で、実に気付かない。
傍で眺めていると、布団を勢いよく叩く音がする。
午前中の秋の光の中できびきびと家事をこなす、きっとまだ若い主婦だろうなと、思う。
掃除、洗濯、布団干し‥‥
もうあまり手際よくする気もないし、する必要もない。
どこかに、主婦リタイア願望も。
10月15日(月)
「媽媽」と呼ぶ一歳児秋の虹
-連俳より-
10月15日(月)
チェンバロの音色す秋の黄の薔薇に
昨夜のこと、BBSへ薔薇の花の画像をalmさんから頂いた。
そして、今日、わたしは浜松の「楽器博物館」へ。
入ったとたんに美しいチェンバロが。
くすんだ金色のボディーの彫刻、蓋の裏に描かれた人物画。
ヘッドフォンで聴いてみた曲は言うまでもなく優雅で。
夜、わたしはこの句を、almさんのBBSへお届けした。
-almさんの薔薇-
10月17日(水)
コスモスの二輪の揺れを想ひけり
10月18日(木)
宵寒やオペラ近づく話など
来月の初めに「アイーダ」を観ることになっている。
チケットを手に入れていただいた方からの電話に、その話となって‥‥
わたし、ってドジ!
この間からそのチケットを探しているのにどこにもない。
思い当るのは、渡して頂いたのは綾戸智絵のコンサートに行く時だったこと。
バッグのポケットに入れたこと。
暫くして、そのバッグを片付ける時に、使用済みの半券だと思ってゴミ箱へ捨てたこと。
つまり、「アイーダ」のチケットを貰ったことをその時忘れていた‥‥らしい。
再発行の依頼をして貰うことになって、ほっ‥‥
でも、ほんと、ドジ!
おっちょこちょい。
10月20日(土)
フィッティング・ルームは秋明菊のもの
カットグラスにあふれる、白とうすむらさきの花に息をのむ。
わたし、ここへ何しに入ったのかしら‥‥
10月21日(日)
「おちばおちば」にはのおちばがおきにいり
10月23日(火)
大小や夕冷え時の宅配便
一つは南から。
もう一つは北の方から。
北からのは冷たくて、クール便。
南からの大きな荷物は暖かそうな色。
送り主は二人ともわたしの大切な人で。
お友達、そして次男。
(仙台牛のタンなんて‥‥好きなものだけれど、いいのかなあ)
10月26日(金)
秋澄むや天守閣やや下に見ゆ
先週のこと、あられさんと一緒に見上げたのは小雨の日。
今日のような青空だったら、ゆっくりと歩けたのに‥‥
−あられさんの写真から−
でも、K子さんと三人のおしゃべりも楽しかった。
夜には、Ayanoちゃんとパパとママにも会っていただいたし、ね!
10月31日(水)
猫の来てひとつ柚子の実揺れたよな
11月1日(木)
O型にA型の夫婦秋ともし
まだ晩夏か初秋か、迷うくらいのご夫妻。
それでもお二人の様子には、懐かしく暖い雰囲気があって‥‥
あべこべね、こちらの方が落着きがないわ。
11月2日(金)
夕暮れも蒼き空秋惜しみけり
ふと窓の外を見た。
花水木の葉が急に紅葉している。
庭へ降りる‥‥
沙羅の木の葉は、もうほとんど落ちた。
紅葉の向うに、この秋最後の青い空!
11月6日(火)