夏
−2001−
さくらんぼ二歳児のこのつぶらな眼
この句が出来たのはもう十年近く前の、子供服のお店でのこと。
あつこちゃん、そうです、あのお店です。
あなたは、昨日、おなじベビー服が並んでいるお店へ行ったのね。
あなたの、赤ちゃんのために。
今日は「こどもの日」だから‥‥
5月5日(土)
ひとときを光となりて揚羽蝶
初夏の庭に、ひらひらと。
まだ咲き残っているパンジーに近づき、ビオラに寄り添い‥‥
わたしを楽しませてくれて、山茶花の木の上を越えてどこかへ飛んで行った、あでやかな揚羽の蝶。
5月6日(日)
騎馬戦の騎乗の吾子に風薫る
Yukuko 41才かしら?‥‥またしても、古いノートから。
「風薫る」というと思い出す句なのです。
パノラマのように繋いで撮った写真があったはず。
矢作川の河原での騎馬戦は、合戦の雰囲気あり、でした。
あの、まぁるい笑顔に会ってみたい、そんな五月です。
5月8日(火)
初花の二輪剪られし鉄線花
剪ったのはわたし。
友達の訪れに、どうしてもこの花を玄関に飾りたかったから。
5月9日(水)
胡瓜の香今日の電話の声のよき
騎馬戦の吾子です。
夕方のキッチンで、その話し振りを思い出していました。
5月11日(金)
讃美歌の白百合の詩響きをり
5月13日(日)
孑孑や掛軸の読み難き文字
孑孑 は読めます、ぼうふら です。ぼうふり ともいうそうです。
読めないのは、書かれた短歌の変体仮名の何文字かです。
掛けたものの、見る度にいらいらといたします。
そうです、まるで ぼうふら のように見えまして、ネ。
5月14日(月)
涼しげにワンピースの子橋の上
午後からの、七月かと思うような暑さ。
高校生のセーラー服にすれ違うと、見ている方がたまらない。
その間を、二人の小学生が、軽やかに歩いていて、ほっとする。
5月16日(水)
薫風のごとき言葉の流れ来て
楽しい話を聞きながらの朝食は、とても美味しいと思います。
ファミリーレストランでの今朝のことなのです。
昨日まで東京に居た人の話は、快活で爽やかで‥‥
-連俳より-5月17日(木)
新じゃがを洗へば土の匂ひ立つ
ふるさとからのものだから、その匂いがうれしくて。
5月18日(金)
花茣蓙を敷きてやりたや女の童
5月19日(土)
もの想ひ巡りつづきて額の花
去年植えた額あじさいが、青の色を増した。
姫沙羅の木の蔭であまり目立たないだけに、なんとも清しい。
朝、カメラを向けてみる。
さて、思うように撮れたかどうか。
5月20日(日)
緋の薔薇に廻り終へての目を留む
あれは、たしか萩焼のような花器だったと思うけれど
はっきりと目にしたのは五輪ほどの、まるで芥子の花とも見える薔薇。
5月22日(火)
雨音のほどよきことよ鹿尾菜煮る
「昨日は久しぶりの雨でお花も生き生きとして いいね!と言っていたのに
もう二日も続くとよく降るわねー になる 、 人間我儘だね!」
お昼前に、この街に住む友達から来たメール。
おしまいのひと言が、彼女らしい。
書いている姿が、笑顔が目に浮ぶ。
‥‥で、わたしは、このページを、まだ彼女には教えていないんだけどな。
ひじきを煮ながら、書いています。
5月23日(水)
『薔薇の騎士』をんな同士の恋の歌
オペラは絵空事の素晴しさ。
美しい姿と声の女性二人が、元帥夫人と若者に。
絵空事が、より絵空事となる不思議。
一昨夜のドミンゴの、「サムソンとデリラ」も観たかった。
5月24日(木)
サウンドの海漂へり夏の夢
リチャード・クレーダーマンは真っ赤なブレザー。
髪は未だブロンド。
最前列のわたしの3メーターくらい向うで弾いている。
ピアノの後に、スクリーン。
海の、波の映像が‥‥
しばらく後では、真上から写す鍵盤と、その上を走る指。
なんと大きな手!オクターヴなんて、5度くらいに見える!
ドラムスとギターとベースギター、シンセサイザー。
それから、ヴァイオリンもチェロも。
一番好きだったのは「見つめあう恋」
なぜなら、この曲は暗譜するほどエレクトーンで奏いたことがあるから。
そして、最もリズミカル。
それにしても、それにしても
ラストに花束を持ってステージに上がる若いファンが、なんと100人近いのには!
一昨夜はオペラで、今夜はご招待のコンサート♪
5月26日(土)
遠き日は杉落葉舞ふその周り
庭に屋久杉のテーブルを置いていた。
改装した時に庭へ出してから六年。
初めはそれなりに楽しんでもいたのに、もう風雨にさらされて傷んでいた。
今日、こわされてしまったテーブルが、大きな屋久杉だった頃を想像している。
わが家で、中に油壷を並べて好評だったことも思い出している。
5月28日(月)
杜鵑花咲きあふれわが手に油壷
5月29(火)
<油壷、大きくなります>
水羊羹城山の絵の写真来る
松山城の絵をほしいという人があり、友達に相談したら描いて下さる方が見つかった。
下絵の写真を数枚送って頂いて、私が一番に見たことになる。
懐かしさ、あたたかさに、ふと思い出したのは冷蔵庫の水羊羹‥‥なに?それ!
5月30日(水)
白き沙羅の初花見上ぐ朝の窓
5月31日(木)
かたばみやナタリー唄ふ喫茶店
ミックスサンドとアイスコーヒー、それがお昼。
赤いミニ薔薇や、優しい花々が咲く庭に、珍しい かたばみ が!
ピンクの花が少し大きいかなと思うけれど、それは普通の かたばみ と同じ。
ところが、葉が、なんと、深いふかいむらさき色!
「珍しいでしょ。それに、このかたばみ、ちっともふえないの」お店のママはそう話してました。
あれが、本当の むらさきかたばみ なのかしら?
映像のナタリー・コールは“モナ・リザ”を綺麗に歌っていました。
6月2日(土)
梅雨入とふ揺らぎゆらぐや白き花
雨が降りそうな昼前に、部屋を吹き抜けるように風が流れて‥‥
ふと見た鏡の中で、白い花が揺れている。
振り返ると、中庭では、数え切れないほどの沙羅の花が、揺れる、揺れる、揺れる!
6月5日(火)
河鹿笛明日はあるらし同級会
四国は宇和島。
宇和島は野川。
美しい河鹿の声が聞えた、わたしの部屋。
6月8日(金)
はじめての門を潜れば沙羅の花
友人夫妻の誘いで行った和食の店で、沙羅の花に迎えられた。
木の下につくばい、水に二輪の花が浮んで‥‥
印象の通り、すべてが美味で、和やかだった。
でも、店の名は「櫨」。
6月9日(土)
熱帯魚ひらりと青く廻りたり
あでやかに水中花とも見ゆるひと
6月10日(日)
ベル揺れる白き四葩の店のドア
ひと房の柏葉あじさいが、夕暮れには美しい。
それぞれに花への讃辞を贈りながら、四人で店に入る。
6月12日(火)
柚の花やいとほしくなるかをりして
6月13日(水)
ハンドルを切りつつ鹿の子を見しと
それはカナダのお話。
古い映画を観たくなった。
「子鹿物語」‥‥可愛いブロンドのおとこの子。
6月14日(木)
噴水の曲線直線ただ白し
雨上りの梅雨空の下、川面から生れ、川面に落ちる噴水。
青空のそれとは違って、光りはしない。
抑えたような白さが、反って鮮烈で。
大きなガラス越し。
わたし、なぜか噴水が気になり眺めていた夕方。
6月16日(土)
仮名入力思ひ浮かべる桜桃忌
ワープロの頃は、仮名入力だったわたし。
パソコンも初めはそうだったかしら。
インターネットをするのならと注意されて、ローマ字入力に。
今日はふと、仮名入力で書いてみたくなりました。
いえ、思っただけ、なんですよ。
6月19日(火)
紫陽花を切る人もわが中に在り
雨に降られて重く傾いた紫陽花を剪ろうと、小雨の庭へ。
こんなに、と思うほど大きくなった紫陽花の鞠に圧倒されながら、思いきって剪る。
剪る。剪る。剪る。
わぁ、どうしよう、こんなにたくさん、すてるのにこまる‥‥
庭の一角で燃やしていたあの頃が懐しい。
おしまいに、まだ白っぽいところも残った遅咲きの数輪を取り、カットグラスに活けて、ほっとして。
6月21日(木)
「バンドネオンの嘆き」聴きつつ冷素麺
なんという取り合わせ?
そう思いながらも、好きだから替える気もなく、そのままで。
梅雨の日曜の昼には、いいんじゃないかしら。
6月24日(日)
をさなごのこゑにうべなひねむのはな
6月25日(月)
団扇手にダンス教室中休み
休憩があるわけではないんです。
あまりの蒸し暑さに、わたしが一人、中休みを作ってしまいました。
エアコンは入ってましたけれど、ね。
ワルツとウチワの取り合わせもなかなかで♪
6月26日(火)
見えねども光あざやか梅雨の星
MDが届いた。
先月のBS‐iのラジオ放送で取り上げてもらった時のもの。
大学生の目にとまったのは、「句集」の中の三句。
石鹸のにほふカーテン秋さやか
捩花の捩れる様の素直なる
飛行機の青き灯ひとつ天の川
リクエストの曲は?とメールで訊ねられて、「星に願いを」と書いた。
夕方のMDプレーヤーのイヤホンから、とても素敵な音楽が流れた‥‥
ありがとう!担当の千葉クン!
爽やかな声でしたよ。
6月27日(水)
六月の海水白く限りなし
海を見たいから行った集りでしたが、梅雨ぐもりの下の海は
青くはなく、輝きもせず、灰色に近い白い色でした。
向うの半島も見えず、水平線もなく、その白さは拡がり空と繋がっていました。
‥‥今、気が付いたことです。
わたしはこの字の色と同じの、ブルーのシャツを着ていたと。
-連俳より-6月28日(木)
数本の捩花に逢ふ歯科の前
ほっとしてドアを出て、足元にやさしいピンクの花を見つけた。
彼女たちに、「おつかれさま」と言ってもらったようで‥‥
デジカメを持っていたら、あの美少女を写せたのに。
6月29日(金)
京の味しのぶ言あり鱧おとし
6月30日(土)
西瓜切る「す・い・かぃ」とうたふやうなこゑ
こんな西瓜は、わたしにも初めて。
「小玉西瓜」とレッテルにあるけれど
球ではなくて、フットボールのような形の西瓜。
UPした後で、あら西瓜は「秋」!
でも、そのままで置きましょう‥‥記念すべき西瓜ですから。
7月1日(日)
ウエストの既に締りて子かまきり
人間の子供はおなかが出ていて、ウエストなんてないのにね。
夕方、見付けた5センチもない蟷螂の子には、くっきりと細い黄緑の胴がある。
7月3日(火)
花籠にわたしの好きな蘭数輪
それはデンファレ。
メインは白いトルコ桔梗、そして濃いピンクの薔薇。
これって、まるでわたしにもらったような♪
7月4日(水)
水撒けばくるくると舞ふ蕾あり
鉄線はなんだか元気がない。
その横に、桔梗の五角形のつぼみ。
明日にでも開きそうに、まぁるくふくらんで。
7月5日(木)
緑蔭はゆたかなり君住む街の
「君」がどなたかは申しません。
だって、四人の「君」、なんですから‥‥
わたしも住みたくなりました。
7月8日(日)
冷房の効きたる家に戻り来て
単に、だれか消し忘れてお出掛けになったのでしょうけれど。
おかげで、涼しくてほっとしましたね。
7月9日(月)
風炉点前ならねど星の茶碗にて
茶室ではなく、ダイニングで気軽にお茶を点てて。
わたしには、黒い夏茶碗で。
片側の縁に銀色のスターダスト。
「七夕のお席のね」と言いながら、彼女は微笑する。
知ってるのかしら?
わたしの好きな曲たちを。
八日の夕方のことでした。
お二人さん、あなたたちのお茶碗も素敵でしたよね。
7月10日(火)
ほしきものなどなく通る夏バーゲン
ごく稀には、あら!という買い物もしたし
数年間の、売る側になっての初日は、とてもとても楽しかった。
賑やかさは好きだけれど、今日も素通り。
7月12日(木)
水遣らばかそけき花の応へけり
また気付くのが遅かった、紫式部の花。
半分はもう緑の小さな実になって、それでも薄むらさきの花を見せてくれた。
早く見付けても、あの淡い花は、わたしには写せないと思うけれど。
7月14日(土)
白雨の来て過ぎ去りし庭の色
7月16日(月)
初蝉に呼び戻されし夢の路
何処をどう‥‥誰と歩いていたのか‥‥
夢は定かではないけれど。
さあ、夏の朝!
7月17日(火)
夏の夜の舞台にほぐさるるものの
弾けるような明るさは、その関西言葉に依ること大きいのかもしれない。
小柄な彼女の動きに語りに、どんどん引き込まれて。
歌は?
もちろん素敵です。
でも、どこか、ご本人も話したように、さだまさし との共通項が‥‥
シャープス&フラッツのフルバンドに負けない綾戸智絵。
黒いパンツに白いシャツ。
チェスの盤四マスのような白と黒のミニのワンピース、黒いブーツ。
二時間で何かが軽くなったような。
出来たら、彼女だけの弾き語りを、二曲ほどは聴きたかったけれど。
7月18日(水)
声高や韓国風の冷奴
はじめて食べたのですけれど、この暑さには、和風より合う、と思う。
ほかの料理もそう。
なんか、元気が出るようで、みんな、いつもより声が大きいみたい。
新しいお店、発見!
7月21日(土)
人よりも恋しきものの夏旺ん
7月24日(火)
唐撫子よりの土産を手渡さる
彼女を何の花に例えればいいのかしら、と歳時記を繰っていた。
百合、そうね、似ているけれど‥‥
石竹!
可憐で、でも、しっかりしてて、そして別名が唐撫子。
親しい人が台北へ出張で、わたしの娘に逢って来て下さいました。
7月26日(木)
蝉時雨昨夜のモダンジャズに似て
無理があります。
トランペットの音には聞こえない、スイングもしていない。
でも、なぜか、ボサノヴァに思えないこともない‥‥
まだ、ねむいのかしら、わたし?
7月29日(日)
天守近し花火桟敷も整ひて
今はまだ川に噴水主役なり
7月30日(月)
炎天に白き花あり白き散る
8月2日(木)
五万石太鼓怒涛の夏祭
爆竹もざわめきも、なにやら堅苦しい挨拶も‥‥
何もかもよく聞こえる。
出発点の寺院も近いし、行列が通る大通りも歩いて数分。
水を撒いた後は、エアコンを止めて窓全開。
わたしは家でお祭気分。
あらら、今度はサンバ!
浅草からの参加とか。
見に行った時には、にこやかなブラジル美人と握手したっけ。
「なんとか音頭」よりもサンバが好き。
そうそう、ブラジルにも咲くというニオイバンマツリが、十輪ほど咲いていて
あの香りには、この暑さが似合うと。
8月3日(金)
「軽騎兵」に合せ花火は炸裂す
金銀に煌く糸や大花火
舟に立つ手筒花火の男衆
噴水と競へる白き火花かな
川面にも夏菊咲けり半円の
「星屑!」と感歎の声揚花火
夏満月桟敷を照らす宴果てて
8月4日(土)