冬
−2001−
流水のゆるき川なり冬に入る
岸辺の桜並木の葉は、重い色をしている、いかにも冬。
まだ少しだけの紅葉。
11月7日(水)
冬黄葉する枝に二羽朝の鳥
ちょっと早起きのくせがついている。
この時間は大きめの鳥が来るらしい。
うす曇の空に、さるすべりの木と鳥のシルエット。
さるすべりの実も食べるのかしら。
11月8日(木)
新しき十一月の乾燥機
このマンションに付いていた衣類乾燥機が動かなくなった。
もう、十五年は経つから、買い直すことに。
夕方届いたのは白いきれいなもの。
乾くまで頼るのはタオルだけなのだけれど
なんだか、嬉しい。
11月9日(金)
独り行く街はやクリスマス・ムード
ほんとに、ほんとうに久しぶり。
昼の名古屋の街を一人で歩くこと。
だから、ふっと素敵な買物をして‥‥
独りでケーキと紅茶を愉しんで。
11月11日(日)
冬の夕こころ揺らぐや庭園灯
冷たい風。
早い宵闇。
こわれていた庭園灯が、この数日、五時になるとあたたかい色で点る。
ほっとするわたし。
11月14日(水)
シャンソンに白い毛皮が揺れゆれて
「ボジョレ・ヌーヴォーですから、私の装いも紅白で‥‥」と彼女。
真っ赤なドレスに白いファー。
もう、十五年は彼女の歌を聴いている。
透明な甘い声の響きが好き。
今夜は中でも「目を閉じて」がいい。
11月15日(木)
錦蔦の色も流るる香包
鳴りものはもはや歳末道頓堀
冬茜乗りたき列車伊予路への
−岡山駅にて−
倉敷はうすみどり色小春日の
堀沿いの柳がまだ緑色にやさしく揺れて。
美術館も「エル・グレコ」もなつかしい。
美術館の庭に柊の花が咲いていた。
人中に兔ゐるなり赤き紐
耳も眼も空色ジャケツのPeter似
車窓には冬の弦月こだま号
おでん種すこし加えてあたためて
馬鈴薯と人参と。
一日中出掛けていたので。
歳時記にこの句を見つけた。
とってもよくわかる。
11月22日(木)
室咲や俳句談議となりし午後
立寄った店で会ったひと。
俳句歴はわたしの倍くらいかしら、そして小説も書いてらして。
華やかな店で、花も実もある話を伺った。
11月24日(土)
訴ふる言葉聞こえず侘助の
咲いているとは思わなかった。
例年、白い花が先に咲くから、まさか、薄桃色のこの花が‥‥
万両と千両を写そうとしなければ
この可憐な、開いたばかりの花に気付かないでいたのだ。
気付かずにいることの、どれほど多いことか。
11月26日(月)
階段を上ればポインセチアの赤
越して来た頃は、五鉢を並べていた。
何年か前から三つにして、夜、取り込むことを楽に。
11月末になると、ポインセチアがほしくなる。
今年のはとても綺麗。
湯豆腐にせむと一丁求め来る
あれ、一丁と言うんでしょうか?
ちがうと思うんですよね。
パックされているんですから、どうも小さめなような。
でも、ここは一丁と書きたくて、ね。
今夜は湯豆腐にはしませんでした。
明日の朝、お味噌汁に入れるのかも‥‥
12月6日(木)
幾十年前にこの地へ黄千両
二十年前なのか三十年前なのか‥‥
それとも四、五十年前???
12月8日(土)
落葉掃きこころに一首ひびきをり
中庭にいっぱいの落葉。
きれいだわ、などと放って置いたから‥‥
昨日送られた歌誌にあった歌は秋のものだけれど
惹かれる歌だった。
いちはやく秋の紅葉の景色する楷・唐かへで・いてふいますこし をさむ
12月9日(日)
城砦かとビルを見せたり冬茜
矢作川の向うの空は
ブルーから茜色へのグラデーション。
夕焼を背にして、小さなビルが灰色に浮び上がり
まるで西欧のどこかの古城に見える。
短い時間のお伽話。
12月12日(水)
寄鍋や庭園灯の点く頃に
六時に設定してある庭園灯が、十分遅れて点いた。
そんなことに、初めて気付く。
そして、その時間に鍋物をというのも久しぶり。
わたしまでも何かと出掛けることの多い季節だから。
霜焼の赤き手なりきマニキュアす
ふと思い出していた。
小さな手のしもやけを。
霜焼の手の、幼い子を見てみたい‥‥
12月17日(月)
南阿よりの歌手の「ホワイト・クリスマス」
12月18日(火)
柚子湯の香ふと独り居の子を想ふ
庭のたった一つの柚子の実は
お正月過ぎまで、そのままで置くことに。
12月22日(土)
照明は雪を降らせて導入部
凍星や金米糖の精の舞
12月24日(月)
花束はふるさとよりのクリスマス
思い掛けなさは、もう何度目になるかしら。
友達からのプレゼント。
ミニ薔薇は黄色とサーモンピンク、私の好きな色をいっぱいに!
素敵な薔薇園の、素敵なホームページも最近教えてもらっている。
一輪を写してみた。
新しきマフラー鏡見直して
なんとなく、下の薔薇の色に似ている。
好きなETRO。
買ったのは11月11日‥‥
12月28日(金)
もういくつうたひ二どめのとしのくれ
12月30日(日)
誘はれしニューイヤーズイヴ・コンサート
12月31日(月)