俳 句 メ モ リ ー












夏潮の明るき真昼船出せし




好ましき立姿あり藍浴衣




海の絵の暑中見舞を書き終へて




母性たるを示して猫は夏痩せぬ




冷房の効きのよしあし部屋ごとに




透明な翅を残して蝉消えり




避暑に行く他のものごとも避けて行く




いづこよりか甘き香の来て秋立つ夜




新涼や窓を開ければ白樺の




鶺鴒よせせらぎの音に包まれて




フェアウェイに残鶯の声響きたり




胡桃一つ載せる左手ティータイム




雨びえの湖畔人魚の壷見つむ




蒼穹と白雲八ヶ岳の秋




うす紅のちぎりてみたき林檎の実




残暑見舞わが家へ書いてみたくなり




三文字の墨あざやかに秋扇




鳳仙花指ではぢきし女の子




赤とんぼ群れて漂ふ土手の道




いきなりの朝の挨拶つくつくし




秋の薔薇わが家に幸を運び来し




確かなる実り葡萄の手応へに




鈴虫やヴィデオ五つも借りてくる




浪漫派はたれか無花果のコンポート




濃き色の上着選びぬ八月尽




白桃や瀬戸内海の波白し




透明な歌声となり秋の蝉




コスモスの思ひがけない贈物




雨の宵秋刀魚の刺身一皿を




きちかうの明日咲きさうな白つぼみ




秋虹のごとくに立ちてココ・シャネル