春立つ夜弦月の下歩みたし


ほんの少しだけ暖かいような気がして。
ほんの少しだけ歩いてみた。

「家康」とか「三河武士」などという醸造酒が並んでいる酒蔵跡の店。
<御用の方はボタンを押してください>と書いてある。
昼間もそうなのかしら?

車の傍まで戻った頃に、今年初めての春の月に気付いた。
2/4 火曜 






お手玉を持つ指ほそし梅紅し


三歳になった女の子が庭へ出て行った。
目で追うと、あら!
今日、紅梅は開いている!

わたしからの誕生日のプレゼントは、お手玉を三つ。
ジム・トンプソンの布で作りました。


2/5 水曜 






父好みの皿を選びてさくら餅


二月になると、わたしは桜餅を買う。
何十年もそうして来て‥‥

それを父と結び付けたのは、今日が初めて。



2/7 金曜 






沈丁は堅くなにやら胃の痛く


庭の沈丁花はまだまだ。
近くの花の多い庭でも紅は深くなっていたけれど、陶器のようで。

‥‥どなた?
食べ過ぎじゃないの、っておっしゃる方。
2/8 土曜 






水滴は四角早春の雨降れば


2/10 月曜 






内裏雛座します午後の喫茶店


いえ、コーヒーを召し上がっていたのではなく‥‥♪

大きな内裏様なのに、帰る時まで気付かないで。
でも、珍しく<あんみつ>をオーダーしたのは、
そういうお店の雰囲気だったのかと。
2/11 火曜 






新しき靴の軽さよクロッカス


何だったかしら‥‥
あらあら、あの楽しげなステップの名、忘れたわ。
2/14 金曜 






街角にはづむ声して朧月


2/15 土曜 






ヒロインは勁さを秘めて篝火花


「俳句メモリー」にはこの句を冬に入れてある。
むかし、クリスマス前の季節に作ったから‥‥
    シクラメンないしょ話の少女たち
キキさんから頂いたミニ・シクラメンの絵には、この句が合うような。




Click Please♪
2/16 日曜 






ふるさとの言葉の客や水菜切る


2/17 月曜 






盆梅の催しありといふちらし


近くの天満宮では、今年初めての催しらしい。
週末には行ってみよう。
<甘酒・しるこ 無料進呈>と書いてもある。

もしかしたら、あつこちゃんに逢うかしら。
2/18 火曜 






巻寿司も黄色の花も雛菓子に


ふっと買いたくなる、雛菓子。
飾っておきたいな、などと思ってしまう。
でも、きっと食べはしないんだから‥‥
買うのなら、ほら、さくら餅にしましょ。
2/20 木曜 






春風が揺らす真珠の首飾


最近のこと、可愛い女の子が結婚した。
キーボードを奏き、お父さんとデュエットで歌うMihoちゃん。
彼女がいつも付けているのは真珠のネックレス。
今夜はそのお店で披露パーティー。
爽やかなウェディングドレスの彼女は、花嫁の父と楽しそうにダンスを。
美青年の花婿はドラムを叩いていた。

彼女へ贈った句は小さなプレゼントのカードに。

2/23 日曜 






沙羅の木の芽吹けばみ空高し蒼し


2/24 月曜 






韮の芽ややはり未来は思ふべき


植木鉢の韮が5センチくらいに伸びていた。
この韮はふるさとの、宇和島から松山へ。
その数株を随分前に送ってもらったもの。
放ってあるに近いのに、毎年伸びては夏のおわりに優しい花を咲かす。


2/27 木曜 






三月やフルーツムース掬ひをり


銀色のスプーンに載ったオレンジ色。
パッションフルーツの香が立つ。
しばらくそのまま眺めている‥‥

可愛いフランス料理店の、美味しいオリジナル・デザート。

あゝ、春なんだわ!
3/1 土曜 






ジャズならばベースもあらむ五人囃


地謡、笛、大鼓、小鼓、太鼓。
わたしの雛壇の五人囃の中では、地謡の人形が可愛い顔だったような‥‥

三月三日の雛祭は、相変わらずぴったり来ない。
で、こんな句を作ったりして。

でも、この街の雛の菓子、伊賀饅頭を買いました。
3/3 月曜 






靴を求め来し日の夜半に春の地震


あ、この靴!
久しぶりの、ひとめぼれ、かな。
「!」と思った時には、買っておいて間違いがない。
靴とバッグは、そうなのね。

それはいいんですけれど、今しがたの「!」は、震度3。
3/4 火曜 






土産物並ぶコーナー冴返る

あら、この街にはこんなお土産も出来たのね。
《いえやすちゃん》なんて、小さなお人形。

今度デジカメ持って来よう。
3/5 火曜 






春の雨大観覧車廻らぬ夜

春愁がみなとみらいの中にゐる

されど優し春潮寄する港なり


3/6 木曜 






買ってしまふ菜の花色のハンドバッグ

みなとみらいのクィーンズタウン。
閑散としている。
午後になれば賑わうのだろうか。
エアコンが効いていないことが、気に掛る。
快適な空間でなければ、人は長居はしないのに。

なんだかしらなけれど、バッグを買ったわたし。
そう、理由は4日と同じ。
それと、売上協力‥‥?
3/7 金曜 






松原を背に潮風・春光と



磨かれて波打つ硝子沈丁花

白木蓮牧水記念館通り過ぐ
          -沼津倶楽部周辺-


由比ヶ浜沖に船影春暮色

3/8 土曜 







せせらぎは碧の和音山葵沢

交響曲とまでは言えないかもしれない。
緩やかメロディーが何層にも重なって流れるような。
そんな思いにさせてくれた、春の合同展の友達の大作は、わさびの曲線。



click please♪

3/9 日曜 






歌姫の声朧なるもの誘ふ

ほんご さとこ
3/11 火曜 






鯛めしや桜鯛にはあらずとも

瀬戸内の鯛飯は鯛を丸ごと釜に入れて炊く。
それも作るけれど、わたしが好きなのは南予のもの。

炒り胡麻を擂って生卵と酒と醤油を混ぜる。
その中に鯛の刺身を入れて、熱い御飯に掛けるだけ。
刺身と卵の鮮度が問われるけれど、とにかく美味しい。

今夜は、ひらめの刺身が新鮮だったから決めたメニュー。
あら、「ひらめめし」かしら?
3/14 金曜 






春の川華やかに和装集ひたり

川沿いのホテルへ車を置かせてもらっていたから、公園の中の神社から戻ると、
入り口もロビーも、淡い色合いの和服の人々であふれていた。
どうやら表千家の会合らしい。

あゝ、いいな‥‥と思う。
茶道からは早く離れていたけれど、それが少し残念なような。

ええ、わかっています、わたしには入れない世界だってこと。
3/16 日曜 






われは母なりいかなごを求め来し

3/18 火曜 






げんげばなつんでまあるくもってごらん

ふっと、紫雲英野にあの子と駆けて入ってみたいと思った。
広いえんじ色の畑、今はほとんど見ない。

どこかにないかな。
3/20 木曜 






わかさぎや魚のやうに泳ぐ話

毎日一時間は泳ぐという人。
クロールの泳法を詳しく説明してくれる。

わかさぎをイメージするよりは、むしろ平目とか鰈とか、なのかなと思う。
‥‥でも、今夜はわかさぎ!
3/22 土曜 






岡崎城さくらもつぼみ稚児行列






 3/23 日曜






待たるるは春告鳥の声そして

今日が二十五日。
そろそろ鶯の音で目覚める朝が来そうな頃。

いろんな事象に、春を告げるものがほしい。
3/25 火曜 






春雷の朝なりき汝の生れし時

 3/26 水曜






沈丁の馨れば人を迎へたき

やっと咲いた沈丁花。
蕾を付けてから植え替えたりしたので、咲いてくれてほっとする。

傍にある椿にも、斑の入り方の美しい一輪が。



3/28 金曜 






この街をふるさととして花の昼

 3/30 日曜






クローバを見つけ微笑みこぼれけり

すこししゃがんで、左手で四つ葉を探したり‥‥
待ち時間がこんなに愉しいこともある。

歳時記にあった句。
    スカートをひろくクローバにひろげ坐る  山口青邨
それは、むかしの、わたしとも。
3/31 月曜 







嘘は罪ですほんと四月馬鹿

でもね。
もし、これが嘘ならばと思うこともありますよね。

わたし、今日は嘘を言えませんでした。
なんか、つまんない‥‥

いえ、ちいさなうれしいことが、ふたつかみっつ、ありました。
4/1 火曜






雪洞も揺るる川面や桜の夜

    新しき色を映して水温む 洛介
に付けた句。

伊賀川の流れに沿う桜並木はことに美しい。
晴天の明るい桜の下を歩き、桜の絵を展示してあるギャラリーに立寄るのもいい。
人の多くない夜の、木の橋の上でしばらくを過すのも、なかなか‥‥
−連排より− 4/3 木曜 






校庭の淡き桜を母と見し

‥‥その学校は、fuさんの町の。
4/4 金曜






夕桜見むと小雨の川の路



 4/5 土曜 






花冷のけふ家康の行列も

こんなに熱心に見たのはあの時以来。
十何年も前かしら、花吹雪の美しい日だった。

今日の行列には、外国人ばかりで纏まった侍の一団があったりして。
そしてそのグループは明るく楽しそうで‥‥
4/6 日曜






十輪の薔薇はみごとにさくら色



 4/7 月曜 






うぐひすも歌ふよ入園式の昼

赤いファミリア・チェックのスカートが揺れて。
ピンクのさくら型の名札を付けて。
はしゃいで帰って来た女の子。

お昼なのに、ホーホケキョ♪ と歌ってくれた、今年三度目の鶯の声。


    季語二つ、すこし気になったけれど、いいことに。
    読み返している不器男の句集に、多くあるからかもしれない。

      まのあたり天降りし蝶や桜草 不器男

      うまや路や鶯なける馬酔木山 不器男

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      飛花一片胸に留めたる入園子 トン子

    読んで下さったトン子さんから、こんな句をいただきました。
    ちゃんと、季語をふたつにして♪
4/9 水曜






藤房や金毘羅歌舞伎に行きしひと

 4/11 金曜 






百花の咲き初むふたり春の宵

婚約したばかりのお二人と一緒に夕食を。
こちらも、しあわせな想いに。
4/13 日曜






めばる煮れば魚島はるか波間なる

そうなんです。
瀬戸内海で釣られためばるです。
 4/14 月曜 






贈られしバッグは春の空の色

自分では選べない色が、とても素敵。
お仲間からの嬉しいプレゼント。















4/16 水曜






その笑まひ二胡のひびきに遠霞む

囀りや還り往きませふるさとへ

 4/18 金曜 






カーテンを開けばつぼみ白つつじ

小雨の朝。
今にも咲き始めそうな。

季はどんどんすすむのね。
4/20 日曜






春昼に火事を教へし犬のこと

盲導犬です。
午後、行った先の、お父様の家の近くで火事があったばかりでした。
火元は以前よく行った店で、今は倉庫になっていたとか。
隣家が半分類焼だったそうで。

そのお父様はご高齢ですが、落着いて電話を掛けてらしたそうです。
「あまり鳴くから、来てほしい」と。
わたしの知人は直ぐに掛け付けました。
お家に被害はありませんでした。
 4/22 火曜 






おしゃべりも中断させて海雲椀

お料理上手な友達の手巻き寿司。
小鯛の酢漬けやまぐろ、いくら。
卵焼きと椎茸の味が特別に美味しくて。
頃合よく出された、もずくのお吸い物が、また絶品で‥‥

時間の経つのが早い春の夜でした。
4/24 木曜






白昼夢黄のてふひらと来たやうな



 4/26 土曜 






山藤の静かなる色山の池

藤棚の藤の、華やかな色とは違う。
そして自由な蔓の延び方。

周辺には新しい建築もあるから、なおのこと、その紫の色が美しい。
4/27 日曜






春泥や気懸りなことひとつ決め

春の驟雨の明け方。
あれだけ降ったのに、舗装してある坂道はぬかるみもない。
それはそれで有難いことなのだけれど‥‥
マンションの庭の、少しの土が嬉しい。

明日からは、きっと明るい五月!
鉄線の花も明日の朝は咲きそう。
 4/30 水曜 






タイムスリップ五月墜道若みどり

桜若葉のトンネルを抜けたら、そこは藤棚。
今年の藤房は、すこうし長いかな。
この街へ越して来た頃の、あのゆたかな揺れは?

ベビーカーの若いママを見掛けて、あつこちゃんも公園に居るような気がした。
‥‥そしてどこかには、そんな頃のわたしも?





5/2 金曜






美容室の愉しき話題夏近し

“ブルー・ノート”へ行きたいね、という話などしながらカットしてもらう。
実は、来月、ナタリー・コールの日に予約してある‥‥

帰る時、五月半ばの珍しく長い休日予定のメモに気付く。
「旅行?」
「え、初めてベルギーとフランスと‥‥」
嬉しそうな笑顔!

いつも明るく働いている彼女。
良いシーズンに良い旅を!

    カットして夏めく街を小走りに
この句を作ったのは、多分彼女とおなじ年の頃だった。
 5/3 土曜 






チワワの仔こわごわ抱いた子供の日

一度行きたかった「わんわん動物園」で。
抱かせてもらう前に、子供が手の消毒をするんですよ。
やさしいおねえさんに傍に居てもらいます。

実は、行きたかったのはわたしなのですけれど。

5/5 月曜









新春へ