春浅しこの頃のこと十年前
    阪神大震災から十年。
    罹災、その直ぐ後に、神戸から着替えもお持ちにならないような状態で、
    わたし達の店の品物を撤収にいらした数人の方々。
    六年続いた、フランチャイズのこども服のファミリアのお店は、
    一月末でクローズすることに決っていた。

    あの方たちの明るさ!
    どちらが慰め役なのかわからなかった。
    そして、手伝ってもらった人々の中に、学生さんだったあつこちゃんの姿もあった。

    あの時の、熱い感動は今もわたしの心に残っている。

    2/4 (金)

    


十五年経れば紅梅の振袖の
    そんな振袖を彼女には着せたい、と。
    深紅の地に白梅もいい。

    その姿をわたしは見るのかしら?

2/5 (土)

    


春寒にスウィング贈る人の笑み
    満員のLIVE HOUSE。

    演奏は、花岡詠二(cl)、三井章夫(tp)、八城邦義(ds)、
    そして、青木喬嗣(bass)、菅沼直(p)、キャンディ浅田(vo)。


    キャンディ浅田と八城邦義


    2/6 (日)

    


陽炎や縁談ひとつ舞ひ込めり
    暖かい午後だから、
    会合のあと、三人ですこし離れた喫茶店へ。
    日本家屋をそのまま使った店なので、ケーキも美味しいけれど葛切があった。
    二人はそれを、わたしはアイスクリームを。
    コーヒーは頂いたあとだったし。

    二月とは思えない一日だった。
2/9 (水)

    


パンジーを摘むかろやかになりたくて
    摘んだワインカラーの花は、
    寒あやめの細い葉といっしょに活けた。

    ブラントンの空瓶。
    ほかのグラスより似合いそうで。

    2/12 (土)

    


弦楽のとき過ぎゆけば風光る
    三時からのコンサート。
    「スロヴァキア室内オーケストラ&錦織健」
    まだ新しいホールの音響は抜群で、
    バロック音楽に包まれた早春の午後。

    ひと言も話さない錦織健も、初めて。
    それはそれで素敵なのかも。

    予想どうり、「四季」では暫し春眠も‥‥

    あの、エヴァルト・ダネルのヴァイオリンと女性のチェロ、チェンバロ、
    なんとも素晴しいトリオの音だった。

2/13 (日)

    


わかくさの色の小さきプレゼント



    「わたし、つくったの♪」
    声弾ませて。

    「遊んで行く?」
    「だめなの、いそがしいの、パパにもつくるの」

    ‥‥おやおや。

    2/14 (月)

    


絵の上に見ゆ佐保姫の舞姿
    ふるさとの宇和島の人からの梅林の写真。
    その美しさに浮んだ句。


    Click Please♪
−連俳より−2/16 (水)

    


ボサノヴァや楽しくかろく春告鳥
    わたしの好きなシンガー三槻直子
    二年ぶりくらい?

    懐かしくて一緒に写真を撮ったけれど、
    それは載せません‥‥




    2/17 (木)

    


背景は光る琵琶湖に蜆売
    店先に蜆を見た。
    買ったのは浅蜊。
    思い出したのは、南志賀の道。

2/21 (月)

    


情報の飛び交ひすぎる杉の花
    わたしにはそのアレルギーはないらしい。

    でも、喘息だったことがあるから、
    花粉情報を見たり聞いたりすると、イライラ‥‥

    グッズが好きで?
    この季節になると買い込んで来る人が居るし。

    2/22 (火)

    


雨だれの音よ黄砂を流す音
    昨日、今日は黄砂。
    わたしはこちらが嫌い。

    洗濯物は家の中に。
    窓も開けたくない。

    夕方からの静かな雨がうれしい。

2/24 (木)

    


春の風邪献立はまたオムレット

    2/25 (金)

    


春の虹父と母笑む夢を見し

    ふわっとたのしい夢で目覚めた夜。
    この母は、おばあちゃま。

    風邪薬のせい?‥‥

    二人の夢を見たのは初めて。
    おばあちゃまの声が聞えそう。

2/26 (土)

    


年一度感知機点検草萌ゆる
    またしても、今日だということ忘れていた。
    日曜の午前中の、珍客?
    とっても若い二人の青年。

    「各部屋、お願いします」とおっしゃる。
    いつもキッチンとリビングだけだと話す。
    じゃ、そうしますと。

    「あの‥‥ロッカールーム、なんですけれど」
     
     ?

    「なあに、それ」
    「ですから、あちらの通路にお持ちですよね、あの中の点検です」
    だって、あそこから発火する?
    電灯もないのに。

    「20年言われたことないのよ、初めてよ」
    「そうですか? でも、検査済と書いてあります」
    「あら、そうなのね‥‥鍵貸してもいいけれど、
    ね!検査したことにしようね!」
    「はい」

    真面目な青年、いいなあ。
    非真面目、教えてしまったかな。

    2/27 (日)

    


麗人の熱き語りよ二月尽

    ETV。
    プリーツプリーツの青いドレス。
    青い宝石。
    黄色の髪。

    美女ではなく、もはや美少年でもなく。
    マルチに生きる、という人の魅力。

2/28 (月)

    


陶板の雛はまろき笑顔して

    3/1 (火)

    


マンネリを逃れ度しとて海雲鉢

    さりとてさほどの変りなく‥‥

3/2 (水)

    


桃の花と見まがふ枝の垣根越し
    満開の梅の花。
    雛祭というから、そう思ってしまうのよ。

    桃の花も咲く四月三日が、私には雛祭。

    3/3 (木)

    


降りしとやけふは都に春の雪

    一年前の今日は、伊予の松山に降った。
    一年前の今日は、キキさんと会って‥‥

3/4 (金)

    


若芝に小鳥の首のせはしなし
    啓蟄が近くなると、そういう姿をよく見る。
    地面をつついている小鳥の嘴は、
    やがて何かの虫らしきものを捕えて。

    今年は今日が啓蟄らしい。

    チーコはもう、その小鳥を追うことをしなくなった。

    3/5 (土)

    


あせび咲く気配の宵のタンゴかな
    モノラル録音のタンゴが流れていた。
    その店も懐かしい雰囲気で。

    昼間見た馬酔木のつぼみは、明日はもっと白い。

3/7 (月)

    


卒業歌式辞のテープ残りをり
    卒業式で歌われる曲も、時と共に変って行くらしい。
    今、多いのは「旅立ちの日に」とか。

    式辞もそうなのだろう。
    残っているテープを、ふと聞いてみようかと思ったり‥‥
    でも、何処へ仕舞ったかしら?

    −連俳より−3/8 (火)

    


春の雁小さき「落雁」載るわが掌
    今夜のおみやげに頂いた鳩の和菓子「小鳩豆楽」。
    そら豆の味なんですね。





    え〜っと、写真の小鳩、私の手相の上ではなく、萩焼の小皿の模様の上に♪
3/10 (木)

    


うれしさの電話のひびき葱坊主
    ある色紙を送った。
    それは彼女が好きなドラマーのサイン。
    色紙が傷まないように大きな分厚い本に挟んだ。
    その本は「宮脇綾子遺作展・図録」で1997年のもの。
    わたしは、その本を名古屋のある料理屋さんで頂いた。
    店に飾ってあったその作品について話していたからだった。
    一昨年のことで、わたしは充分に眺めたのだし、
    きっと彼女もその作品は好きだと思ったから。

    思いがけない程の喜び様に、こちらまで嬉しくなる。

    3/11 (金)

    


秋吉の山火よ写真すら妖し
    ドキドキいたします。
    こちらをご覧になりません?

    どうして、火曜日になさらないのかしら‥‥

3/12 (土)

    


淡雪や龍城神社の鈴の音に
    七年が過ぎた。

    3/13 (日)

    


検眼の点と線見るクロッカス
    ふっと眼鏡屋さんへ寄る。

    そうなんだ‥‥

    わたしはパソコンを買った頃に、パソコン用の眼鏡を作った。
    エレクトーンの譜面台に合わせた眼鏡は以前から持っていたから、
    誰に勧められることもなくそうした。

    なんだか、疲れやすいと思っていたら、
    その後乱視が入って、普段の眼鏡はレンズを替えたのに、
    今、書きながら掛けている眼鏡はそのままだった!

    新しいフレームはほしいけれど、誰に会うわけでもない。
    外でパソコンに触れるのは短時間だから、普通の眼鏡でいいし。
    やっぱりレンズだけ替えるかな。

3/14 (月)

    


蔦の芽や喫茶店には古き椅子
    しばらく行かなかったけれど、珈琲の美味しい店。
    赤い高い背の椅子。
    勢いよく腰掛けた人が、「!!!」の表情を見せた。
    張り替えてあったのだろうか、そうは見えなかったのに、
    スプリングは緩んでいたみたい。

    わたし?
    ゆっくりと掛けましたから。

    3/17 (木)

    


橋の灯も想ひ出も春江映しをり
    三十年前の。
    それよりも前の。

    今、わたしの手にあるのは『霧氷の黙』という、ささやかな句集。

3/18 (金)

    


矢作土手ゑがほのひとに土筆受く
    久しぶりに行った矢作川の近く。
    事務所の隣の、以前住んでいた家は二階建ての新築になっている。

    あまりのいいお天気に、土筆を探しに土手まで行くことにした。
    土の道を歩く心地良さ!

    わたしが採ったつくしは二十本ほど。
    卵とじにはならないかな、と思いながら帰りかけたら、
    用水路の向うから来た人が、「あ、キラキラして綺麗!」と。
    わたしが着ていたセーターのスパンコールが西日を受けて光っていたらしい。
    その人の野良仕事用の帽子は小花模様で可愛かった。

    「土筆、それぐらいじゃね。ほら、上げるよ」
    手押し車の蓋を開けて、ドサッとわたしのビニール袋に入れてもらった。
    「綺麗なもの見せてもらったお礼だよ」

    「ねえ、写していい?」と携帯のカメラで。
    「おや、携帯電話で写せるの?私のでも?」
    と、彼女はポケットから黄色いケースに入った携帯電話を出した。

    なんだか、もっと話したかった人。
    ほんとうに、ありがとう!



    3/19 (土)

    


いっそその旅に乗ろうか白椿
    ゴールドコースト。
    五日間のリゾートホテル滞在。

    ゴルフもしないし、泳ぎもしない。
    でも‥‥ね。

    変化がほしい。
    だから、口語体。

3/23 (水)

    


いかなごや松山訛おもしろし
    今になって読み始めた「坂の上の雲」
    書かれた頃には、側にあっても手に取る気もなかった。
    先日買ったのは文庫本。

    読み始めて、

      伊予松山と言うのは領内の地味が肥え、
      物実りがよく、気候は温暖で、しかも郊外には
      道後の温泉があり、すべて駘蕩としているから、
      自然、ひとに戦闘心が薄い。

    (だから、今日は新田高校が惨敗した?
    でも、昨年は優勝した高校があるけれど‥‥)

    「お豆腐ほどお金をこしらえてあげるぞな」
    という信さんの言葉。
    ???
    「こさえて」じゃないかしら?

    愛媛県変則中学校!
    だったのですね、あべさん、あなたの母校の前身って♪

    そうそう、こちらでは、「いかなご」は「こうなご」
    今、美味しくなって来た。

    3/25 (金)

    


読み返す育児日記や春霰

3/26 (土)

    


そのあした姿を見せよ初ざくら

    −連俳より−3/27 (日)

    


「今夕より通行止」と土手青む
    朝夕は渋滞ばかりだった道路。
    これからは一号線とは通じなくなるらしい。

    矢作川の土手近い道だから、
    静かになっていいのじゃないかしら。

3/29 (火)

    


黄瑞香語る和菓子の匠技
    話の始めは「いちご大福」だったのだが。
    3/30 (水)

    


万博の弁当やよし万愚節

4/1 (金)

    


ふるさとは桃の節句と想ひけり

    4/3 (日)

    


母こほし母のゑがきしちゅーりっぷ




Click Please♪

4/4 (月)

    


はなびらの多ければ春愁うすれゆき




    4/6 (水)

    


さくらさくら人を舞はせるやもしれず



Click Please♪

4/7 (木)

    

夢ごこち櫻墜道六十秒
    西尾市の道路を挟んだ両側の工場。
    そのフェンスに沿って植えられた桜並木。
    通ったことはあっても、知らなかった桜並木。

    満開の今日だったから!

    ともだちの濃紺の車に、散りかかる花びらもまだなくて。

4/8 (金)

    


花ぐもり市松人形の返事待つ

4/11 (月)

    


期待して期待を解きて花に雨

4/12 (火)

    


ひとひらの飛花舞ひ来よと午後の窓

4/13 (水)

    


渋滞に巻き込まれつつ夕永し
    さて、と‥‥
    こんなに時間が経ってはね。
    どこかで夕食摂りましょ。

4/15 (金)

    


春の燭ジャズ・サックスはよく響く
    体格のいい男性のトランペットを追って、彼女の音は深く歌う。
    とても魅力的と聴いていた。

    終ってから、近くにいらしたドクター・ジャズがこうおっしゃった。
    「ね、おなかを大事にね」

    その後で、五月八日がラスト・ステージだと話していた彼女。
    「やっぱりそうなの?何ヶ月?」と尋ねたら、
    「五ヶ月なんですよ」
    「素敵な胎教ね!」と言っていたわたし。

    だから、あんな音色だったのかしら。
    ひたすらの感動。
4/17 (日)

    


アネモネの揺れて歌声笛の音の
    あつこちゃん達のグループ、「クララベル」
    お昼の会場を、さわやかな雰囲気でいっぱいにしてくださいました。
     
     踊り明かそう
     TONIGHT
     モルダウ
     愛の挨拶
     ‥‥
     ‥‥

    −携帯で−

4/18 (月)

    


紅茶の香マグカップにはミヨソティス
    急に冷え込みを感じる今夜。
    ストーヴのスイッチを入れて。

    紅茶の香、というよりはブランデーの香。
    そういえば、マドレーヌがあったわ。
    アンリ・シャルパンティエの。
4/21 (木)

    


花苺パジャマでその実つみし頃
    あのブルーのパジャマの坊やは?




    歳時記にあった句。

      花の芯すでに苺のかたちなす   飴山 實
     
     4/23 (土)

    


朧月夜ヘア・サロンの階段降りました
    午後から、どうしても髪を切りたくなった。
    出掛けにくくて、いささかいらいら気分‥‥
    夜、食事の帰り道、明るい店を見て入ってみた。
    午後8:00まで受付とあったから。
4/24 (日)

    


なつかしき本の届きて春夕焼


    デジカメがインフルエンザか花粉症に?

     4/28 (木)

    


パスポート再発行の四月尽
    2000年にが期限だった前のパスポート。
    もちろん、2000年に更新するつもりだったのに、
    しないまま、その後数年はどこへも行きたくなかった。

    2005年だから、と、またパスポートを持つ気になって。
    さて‥‥
4/30 (土)

    


若鮎や入籍とふ声晴ればれし
     
     5/1 (日)

    


潮の香に躑躅に昼をゆだねたり
    蒲郡プリンス・ホテルの旧い建物が好きで、よく行った。
    つつじの頃には、今日が初めてかもしれない。



5/2 (月)

    


麗かや歌ふソプラノ「口づけ」を
    午後、「新人演奏会」に行ってみた。
    誘ってくれた女の子のトランペットも乗りがよくて素敵で。
    彼女にはJAZZも、と思ったりした。

    その後の、可愛い雰囲気の人の歌に引き込まれていた。
    一つは、中田喜直の曲。
    知らなかったのに、その曲名から気になったし、歌詞が胸を打つ。

    アルディーティの「口づけ」を、
    こんなに可憐に爽やかに歌う人は初めて。
     5/4 (水)