俳 句 メ モ リ ー
陶匠の家に大輪藍あさがほ
この朝顔はむらさきの色だが
絵を見つけた時に思い出したのはこの句。
ずっと以前、瀬戸の磁器作家の窯元へ行った時、とても大きな朝顔が咲いていた。
その藍色の花が、染付けの色のようで印象的だった。
まだ、俳句を作り始めた頃の、懐しい一つ。
7月1日(水)
弾みまた広がる話題夏料理
親しいご夫妻と食事に。
座ったカウンター席の隣には、またお知合いが。
テンポの早い会話がいっぱい‥‥
「にわのうぐいす」と書いてある冷酒の銘を見て
「庭の鶯」なのか「二羽の鶯」なのか、とそんなことから始って、いろんな話になって行く。
肩の凝りそうな話より、料理はうんと美味しくなる。
7月2日(木)
佳き皿に独りの夜の水羊羹
黄の百合も寄せてと決める花飾り
明日の集りのために、エントランスに置く花を見に行った。
たくさんの花がガラス・ケースの中にある。
赤では可愛すぎるし、ブルー系だとあのライティングでは目立たないかも。
イエロー・ボールという名の花が目に付き、やはり、黄色にしよう!
黄色の百合。
薄いグリーンのカーネーション。
白いトルコ桔梗。
オレンジ色の何だったっけ、風船のような花、そしてやわらかいアスパラのようなグリーン。
どんな形でアレンジされるか、た・の・し・み!
7月4日(土)
噴水のしぶき流れて漂ひて
川の中から噴き上げて、その形も変えていく噴水。
梅雨の間は目立たなかったのに、この暑さに思いきり涼しさを見せている。
風に流され、薄く霧のようになっているあの中に入れば‥‥
今日などは、美しさよりも、涼感!
7月5日(日)
ドア・ベルは風鈴よりも響きけり
夜間の講習会のあと、おなかを空かせて入ったお店。
トマト・サラダをはじめに、ナチョスというメキシコ料理が美味しかった。
人が入る度に鳴るカウベルのような音‥‥
カード・ゲームの話が出て、「フリーセル」「ソリティア」だけじゃないよと、他のゲームを思い出した。
7月6日(月)
さくらんぼかろやかになっていく会話
ブラウスの衿にとまって天道虫
そういえば、わたしもこの頃てんとうむしを見ていない。
ナナホシテントウムシの名前も好きだったのに‥‥
子供服の店で、ブラウスに赤いてんとうむしがいた!
こんな可愛い刺繍のてんとうむしと一緒の、男の子に会いたいな。
できたら、その指先にもてんとうむし!
7月8日(水)
黄の薔薇の造花をほめて笑ひだし
“Oh! beautiful roses!” と言って入ってきた彼女。
1メーターほど側へ来て、大声で笑い、それでも、「スバラシイネ」と言っている。
店先で、霧を吹いたように水玉(?)をのせた花びらの薔薇に、わたしもいいな!と思った。
布製、1本100円の5本を買い、カットグラスに挿してある。
2メーター離れたら、本物の黄薔薇としか見えない。
こんなに暑さが続いては、本当の薔薇は活けられないから。
最初におどろいたのがカナダの人だった。
7月9日(水)
白き糸レース手袋編まれゐて
電話で話しながらのイメージ。
暑いお昼前の時間に、友達は窓からの風の中で、レース編みをしているという。
11階の部屋だから、涼しい風が入るのだろうか。
レース編みねえ。編んだら涼しくなりそうな気はするけれど‥‥
7月10日(金)
アイロンを掛けたくなりて送り梅雨
しとしと、という降り方の雨。
続いた暑さの後だけに、朝からほっとした気分にさせてくれる。
土曜日のせいもあるかもしれない、雨なのにたくさんの洗濯をしたり、しかも手洗いまでも。
Tシャツ、ハンカチ、あまり大きくないものに、ゆったりとアイロン掛けなどしたい午後。
7月11日(土)
暑き日は炎暑の国の食事をと
カレーとナン、不思議なしつらえの小さな店。
投票に行った後、遅い昼食のためにその店へ。
茄子と鶏のカレーを運んで来てくれたのは、ネパールからの女の子。
深々としたお辞儀が、とても優しい、美しい。
「ナマステ」と言ったら、にっこり笑ってくれた。
7月12日(日)
巴里祭と勝利に湧くやシャンゼリゼ
3:1でフランスの優勝と知って、少しざんねん。
別にどちらが勝ってもいいし、それほどW−カップに興味があったわけでもない。
ブラジルに勝ってほしいと思っていたのは
数年前に、あたたかで優しい、日系ブラジル人の主婦を知っていたから‥‥
レース編みの上手な彼女からは、美しいテーブル掛をプレゼントされた。
7月13日(月)
夏つばめ今朝この部屋に飛ぶごとし
何気なく選んだ<B-30>は歌声だった。
今まであまり聴いていない、有線放送のマンスリー・スペシャル。
アカペラも多い何曲目かに、思いがけず「La Golondrina」!
一番好き、と言ってもいいメキシコのフォルクローレで、燕の意という。
今まで、リクエストに応えてくれたのは、しばらくこの街に居たフィリピンのシンガーだけ。
今朝の歌は女声で、ゆったりと唄っていた。ギターの音も甘かった。
‥‥自分で歌おうかな‥‥
7月14日(火)
凌霄の落花重なる庭園灯
ここへ越して来る前の家は庭が広く、門から玄関までは煉瓦タイルを敷きつめてあった。
いま流行っている寄せ植えのテラコッタ鉢など、ぴったり合うだろう。
その庭の庭園灯のそばには、凌霄かづらを植えていた。
昼間は暑くるしいほどの朱い花が
夜になると蛍光燈に照らされ、妖艶な美しさを見せていた。
7月15日(水)
ビアガーデンよりもすてきな仮想BAR
ほとんどの人には、何のことか分って頂けないと承知の上。
あるホームページで、面白いメニューを見つけた。
お店の形態はどんなのか想像し難いけれど
私はいろんなボトルが並んだバーをイメージした。
音楽はJAZZ。
昨夜はシングル・モルトを少しだけオーダーしたら、ちゃんと出していただけた。
今夜はブランデー。
オーナーは小説を書き、香水を楽しむことも知っている、チャーミングなひと。
7月16日(木)
ボリュームも高し小夜曲三光鳥
テレビは隣の部屋。
今まで見ていたが、ここで音だけを聴いている。
エッフェル塔を背景にしたスリー・テナーの歌声は
「アイ・アイ・アイ」「ロリータ」「シューベルトのセレナーデ」 とつづく‥‥
アンコールからは、やはりテレビの前で。
「マルキアーレ」のカレーラスが歌った歌詞は
三光鳥は〈月・日・星〉と鳴く、と歳時記にある。
エンディングはエッフェル塔をめぐる花火の光だった。
7月17日(金)
水馬の動きに影は花のやう
手話狂言の会に誘われて、名古屋能楽堂へ行った。
まだ新しいそこは美しい建造物だった。
若松が描かれてのいきさつを思い出したが、今日は老松の舞台。
問題の若松の画は別の所に展示され、一年おきに替えると記されていた。
素晴しいと思ったのは、水。石を敷き詰めた浅い池が、全てを大きくゆたかに見せている。
7月18日(土)
椰子の葉を風が揺らせり昼寝覚め
久しぶりにゆっくりと昼寝。
クーラーを入れなくても涼しい風が流れる日だったから。
電話も掛らない日だったから。
俳句は一昨年のもの。
マレーシアのゴルフ場の涼しい木蔭で、ほんの少しの昼寝だったと思う。
7月19日(日)
七宝の指輪つくづく夏の色
一ヶ月前に買った指輪は、冬の頃気に入って求めたブローチのシリーズ。
宝石を使ったものより嵌めやすい。
一見、青と金に見えて、紺も赤も茶もある。
暑い日には、はっきりして夏らしいと思う。
と言いながら、秋になっても、冬になっても、お気に入りはずっと付けているわたし‥‥
7月20日(月)
花火待つ花火桟敷は組まれゐて
河原を見下ろしては、日に日に桟敷が広がって行くのを眺めていた。
花火大会が近づく気配を何よりも感じる。
遠花火が好きなわたしは、家から見ていたい。
それなのに、ご招待した人をもてなすために、近くで見ることとなる。
そして、結構面白くなって《花火大好き!》の気分になってしまうのだ。
7月21日(火)
白き靴見掛けぬままの今年かな
冬に使われるような材質のものもあって
この夏の靴は黒も多いし、濃い色のものが好まれているらしい。
夏イコール白いサンダル、などというのは何処へ行ったのかしら?
気に入っていた靴も仕舞ったままだし、わたしも、黒っぽいものを選んで出掛ける。
来年。そう、一斉に白い靴が並ぶのじゃないかな。
7月22日(水)
揚茄子にふるさとの味噌しか合はず
白き灯のごとく夜道にさるすべり
シャンソンを聴いて、お食事をして、Barへ寄って、軽く酔って‥‥
友達を送って行ったら、その家の近くの道には
仄かに白いさるすべりの花が、塀からこぼれるように見えていた。
わたしの庭のさるすべりは、まだ蕾も小さくて、毎年8月にしか咲かないのに?
7月24日(金)
一切れのメロンの産地あれこれと
とても美味しいデザートのメロンに、彼女は言った。
「ねえ、何処のメロン?」
「角の八百屋で買ったんですけど」
「そうじゃなくて、‥‥産地はどこ?」
「あ、えーっと、銚子のレッテルでした」
禅問答か漫才か
そんな感じのやり取りが、楽しい食事会のエンディング。
彼女がいると、みんなよく笑うことになる。
7月25日(土)
目眩すらヨットハーバーにたのしくて
午後、小さな写真展に和風造りの喫茶店へ。
思いがけなく、そのカメラマンと一緒に、三河湾のヨットハーバーへ行くことになった。
5月のBaliから、海を見ていなかったので嬉しかった。
繋留されたヨットの側まで寄って見ていたら
少し高い波で細い桟橋が揺れる!
わたしは、ヒールのあるサンダルだったので、慌てて素足に。
7月26日(日)
大夕立ビルも車も洗はれて
ビルの地下に居たら、まったく分らなかった。
暗くなるほどの驟雨に、しばらく待つことにして、11階でコーヒーを飲む。
高い階のガラス窓の中から見ていると、気持のいいような雨。
街中がシャワーを浴びている!
帰って来たら、ミーも縁で雨宿りしていた。
7月27日(月)
微笑みや夏帯ゆるやかに締めて
明るい笑顔にも、着慣れた着物姿にも
芯のあるひとだということは、自ずから顕れている。
生きられる時間を提示されたら、強く、長く生きて行けることもあるのだ。
魅力的な女性が、この街にいらっしゃる。
7月28日(火)
一駅を土用鰻の元へ乗り
土用の丑の日だから鰻を、ということにはならない我が家なのに
今日は誘って頂いて、6時半の待ち合わせになった。
隣の市まで、国道を行くと、この時間は渋滞だと判断した人は、駅の駐車場へ入って行く。
特急で一駅、10分も掛らないくらいでその街へ。そのあとタクシー。
約束より5分早く店に着いた。車での人達は7時の到着。
Tシャツで電車に乗るのも、楽しかった。
そして、とても美味しい鰻だった!
7月29日(水)
大通りへ揃ひ浴衣の人いそぎ
ここから二筋下の大通りと、そこにある公園で
今夜は夏祭のおどりの輪と波が広がる。
夕方、帰って来る時には、繁華街にも浴衣や半被姿の人々が見えたし
公園の近くでは八十代と思われる方も、白髪に素敵な浴衣だった。
子供たちも可愛い。
鮮やかなブルーの浴衣を着た女の子が印象的。
マンションの前の道にも、私より少し年上?の、赤い帯を締めたひとが
弾んだ急ぎ足で、歩いていた。
今頃、あつこ、も踊っている!
7月30日(木)
響き来る祭太鼓と爆竹と
暑いのに窓を開けている。
マンションの一階なんて、クーラーなしでは居られないけれど
ざざーっ!という爆竹の音と、威勢のいい太鼓を暫くは聞いていたいから。
今夜は、企業やいろんな団体の御神輿パレード。
7月31日(金)
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