俳 句 メ モ リ ー






色鳥の一羽二羽来て首かしげ




堤には真っ赤なペンキまんじゅしゃげ




露けしやラ・ヴィ・アン・ローズひびく夜




宵の雨木犀の香も沈みゆき




松茸を食べに行こうと来たメール




赤い羽根回覧版にふわふわと




新米の案内の名はこひごころ




ななかまど大山よりの絵葉書に




金木犀一枝挿さむ碧き壷




蜜柑色のカクテルを手に懐旧談




枸杞の実に遥か遥かの祖母の顔




黄葉の仕度はじめし一樹あり




夕月の昇る頃まで今日の宴




よろこびを運ぶ夜長の宝函




秋水の湧き出づるごときコンチェルト




実ざくろのルビーちりばめこの小鉢




花梨の実合掌造りの屋根を背に




コスモスのくれなゐの風やはらかに




近くより仔犬の声が秋うらら




柿紅葉この一村を覆ひたり




障子貼ることはわすれて障子見る




ほととぎす素直に父のなつかしく




むらさきの音が流れる草の実に




秋の天翔けて写真のEメール




ビルよりの一歩秋冷襲ひ来る




ワックスの掛からぬ林檎手に親し




紅色の花よきことの水引草




秋思なり侘びしきことも歓びも




大きくて十六に切る梨の味




城白く浮き乾杯す秋の宵




のら猫はすこし馴れきて冬隣



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