俳 句 メ モ リ ー

クリスマス・ソング流して家中に
朝起きるなり、有線放送をONにした人がいる。
12月になったら、「季節の音楽」はクリスマス。
三つのスピーカーは全開、いろんな曲がつぎつぎと流れる。
この部屋のスイッチは切って、向こうの方から聞こえて来るのは、今ちょうど「Silent Night」
‥‥いささか、ソウルっぽい。
12月1日(月)
堂々と大門松を立てて駅
冬らしい寒さになった。夕暮れ外へ出るとコートがほしい。
駅前の大きな門松に気付く、そして早いなあと思ってしまう。
クリスマス・ツリーには、気分よく楽しめる季節だが
門松はちょっと早いんじゃないですか?
両方一緒に出現しないでよ。
12月2日(火)
懐かしき香や知らぬ香や枇杷の花
薬効があると奨められて、枇杷の苗を植えてもらったのは三年ほど前。
植木鉢なので、そろそろ植え替えなければと思いながら‥‥
初めて花が咲いた。
歳時記にもあり、傍へ寄ってよく見る。固まって咲いているが、花の形や色は小さな櫻のようだ。
匂いがいい。微かで品のある‥‥<にほひ>と書く方が似合いそう。
月下美人の芳香はうすめて、枇杷の花の<にほひ>は濃くして
それぞれ香水にほしい。
12月3日(水)
月冴ゆる夕べひとつの星も冴ゆ
サッカーの抽選にさへ熱気あり
古暦されど景色は新しく
歳暮買う人のあふれる街の音
デパートの中のホールへ講演を聞きに行った。
有意義な話の後、 クリスマスのデコレーションを見下す場所で、数人でコーヒーとケーキを。
時間が来ると、パイプオルガンの演奏も。
何も買わないで帰る、歳末の都会のデパートの数時間だった。
12月7日(日)
冬霧の中に浮きたり天守閣
昼前にちょっとした集りで、ホテルの11階へ。
窓辺に寄ると、道路では全く気が付かなかったのに、深い白い霧。
やや見下す位置にある天守閣が美しく浮き出て、窓外の景色は墨絵の屏風のように思える。
知らない町へ来ているかの錯覚すら!
12月8日(月)
猫二匹われに近づく漱石忌
野良猫の仔の三毛が「ミー」
きじが「クロチャン」
クロチャンは時に私の手からも食べ出した。ミーはいつまでも用心深い。
そうなると、初めに美人(?)と思ったミーよりも、クロチャンの方が可愛くなる。
漱石ではなく、村松友視の「アブサン物語」にある外猫が、うちにも二匹‥‥
12月9日(火)
スティックの先より生まれ玉霰
老練と言えるほどのミュージシャン達の中で、一人若くて小柄なドラマー。
ドラムスの準備をしていても、そのためのスタッフかと思っていた。
叩きはじめた彼の動きの軽やかで、シャープなこと!
生み出される音の、リズムのあざやかさ!
ぐんぐんと他のメンバーを引っ張って行く!
彼の名は Kuniyoshi Yashiro ‥‥
12月10日(水)
足温め調へること延ばしつつ
「足温め」「足炉」「足焙」という季語を見つけた。
事務所の机の下、乗用車の中にも、とある。何時のことだろう?
わたしの場合は、やはりホット・カーペット。
コンセントが、パソコンとプリンターで、足りないのをそのままにしている。
つまり、今はただのカーペット。
温くしたら長々とここに居そうだから!
12月11日(木)
星空を見上げるやうな大聖樹
蒲郡プリンス・ホテルの大きな松の樹は、毎年クリスマス・ツリーになる。
この辺りでは、一番綺麗なイルミネーション。お正月が過ぎても、しばらくそのまま。
静かで、古い建築のホテルの灯はあたたかく、潮の香もして‥‥
12月12日(金)
クリスマス・カード送るもネット上
今朝シンガポールへ送った。雪のない国なので雪景色を。
これから、台湾へと思っているけれど、やはり雪がいいのかな?
わたしには、一通届いている。
ただし25日まで見ることが出来ないらしく、別にファイルしてある。
12月13日(土)
冬の月ア・カペラは満ち堂内に
冬林檎中に童話が住んでゐる
ふうわりと白い兎のアップリケ
夕方、子供服のお店でディスプレイの手伝いをしていた。
袋に入ったまま掛けてあった、ピンクの100センチのワンピースを、ボディーに着せる。
前に白いクマとウサギ、後には寝ころんだウサギがいる。
着せてしばらくしたら、アップリケが膨らんできたみたい。
ほんとうにウサギの感じがしていた。
12月16日(火)
塩鮭を調理鋏で切り分けて
新巻は美味しいが、切るのが一苦労。
ふつう、ご主人の御仕事では? うちはわたし‥‥
助っ人が一人来て、二人で手際よく! こんなことなら、もう一匹でも!
実は、昨年テレビで見て覚えた《背骨はハサミで》がわたしのハイテク。
12月17日(水)
立尽すのみ冬の海前にして
ほどのよきナースの言葉十二月
説明も、質問も、てきぱきと且つさわやかに。
書き込んでいる文字も記号も、簡潔で素早い。
いくつ位の人だろう?‥‥30才?
早朝のICU待合室で。
義理の母が、軽い発作で入院したという連絡を受けて、明け方病院へ。
甘えたような笑顔、可愛いと思う。
12月19日(金)
同窓会名簿の案内返り花
夏の頃だろうか、アンケートの書類が来ていた。
今度は振込み用紙も。
ふと、友達の声を聞きたくなる。
いちばん近い名古屋の同級生に電話して、彼女勤務中なのに、あれこれと。
大晦日の夜、会うという約束に!
12月20日(土)
街角の花屋はすでに飾売
近くの街角には、大きな花屋がある。
茶色い煉瓦風のビルの窓は、いつも花であふれている。
クリスマス・デコレーションも、とても早かった。
今は歩道にも、注連飾や輪飾の、いろいろな大きさのものがいっぱい。
気になりながら、いつも、暮も押し詰ってから買う。
12月21日(日)
大空に拳のばして冬木立
何日か前に、庭師さんに手を入れてもらった庭。
すっきりとした中に、じゃんけんをしているような木がある。
小枝を払ってしまったさるすべり。
いくつも握りこぶしがあって、みんなが<グウ>では決まらないわよ。
12月22日(月)
白き花ゆらして遊ぶ冬の鳥
まだまだはっきりとは認識していない「天皇誕生日」
うきうきとゴルフに出掛けたひとと、年末の片付けとか気になっているひとと。
おそい朝食のあと、なんとなく眺める庭に、小鳥が十羽以上来ている。
侘助の白い花の枝をちょんちょん飛び移る、その度に花が揺れる。
わたしも庭へ出よう‥‥
おばあちゃま、普通病室へ移るとの電話。
よかったね!小鳥たち!
12月23日(火)
キャンドルを手に手に生誕祭前夜
教会でのキャンドル・サーヴィスへ。
フルートやクラリネットの演奏、独唱を交えながらのイヴのミサ。
幼い二人の子供が持つキャンドルから、隣へ隣へとわたす灯は会堂中に広がって行く‥‥
その小さな燭台を持って歌う讃美歌。
初めて一緒に行った大学生の男の子、「わるくないと思いました」と。
小さな感動が伝わって来た。
12月24日(水)
室咲きのやさしさ見せてチューリップ
昨夜プレゼントされた濃いピンクのチューリップ。
白い花瓶に挿して、玄関の棚の上に。
どんぐりで作ったリスが覗いている、小さな木工品と、クリスマス・カードも一緒に。
一枚のカードはシンガポールから。
一枚のカードには、24日と25日は仕事でシンガポールにいます、とある。
E-mail でも一通はシンガポールからのカード。
あの、光でいっぱいの綺麗なオーチャード通へ行きたくなる。
12月25日(木)
若者の身軽く仕事納めの日
窓ガラス拭き、蛍光灯拭きの、かろやかに素早いこと!
コンピューターの整備も、片付けも、スピーディー。
明日から、何日のお休みだろう、みんな、どうして過すのかな?
主婦としては、これからあまり嬉しくない日々となる。
仕事納めどころではない。ドオシヨウ !!!
12月26日(金)
冬眠のごとくに午後をねむりけり
コーヒーの香もただよひて賀状書く
いつも遅いので別に慌てるでもなく、でもそうのんびりも出来ない。
コーヒーを飲みながら、余裕を装いながら‥‥
そんな時に、叔父が選をしている短歌誌が届いた。
彼の歌には、茂吉に傾倒していたただけに、素晴しい作がある。
今日も、五首ほど好きな歌があった。
12月28日(日)
ここだけは華やかな鉢年用意
リビングと、その隣の部屋から見える広縁に、毎年飾る鉢植。
庭師さんにお任せで、その、アイデアが楽しみ。
青竹を並べた台の上の大きな鉢には、竹を中心に梅と金柑、小さな洋花を根元に植えて。
もう一つの小鉢には、黄色のパンジーをあふれるほど。
和風に拘る庭師さんが、マンションに合うようにと考えて下さる。
これで、お正月が来る!という気持になっている。
12月29日(月)
メールにて越年予定異国より
シンガポールに住む長男から、「シャングリラで年越しをします」とEメール。
行きたかった、行けなかった。
わたし達は次男と、そしてわたしの友達と共に過すことに。
新しい年に、希望を持とう!
わたしの、夢を託そう!
12月30日(火)
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