句 メ モ リ ー















年迎ふウィンナ・ワルツ聴きながら




賑やかな声のあふれて二日かな




初日記キーボードなどに手触れつつ




お年玉用意するのも三つのみ




羽子のごと紅きはなびらひらく花




雪兎むかし朱塗りの丸盆に




七種の粥にはあらず枸杞の粥




あの猫は何処へ行きしか寒の雨




誰の声ビルの窓辺の虎落笛




落葉焚きなつかしくただ落葉掃く




冬銀河地上に生れて煌けり




水仙の黄金の漣うたふ詩




冬凪の海よ島までさそふ橋




「伊予柑ね」大みかんに手を添へながら




割り入れて暫し眺めて寒卵




けだるさをむしろ楽しみ軽き風邪




舞、太鼓女性ばかりの新年会




寒紅梅その香をここに封じ込め




空っ風小学生の膝小僧




手袋を仕舞ひわすれて素手のまま




少しだけ優しく切干し煮る時は




兄妹の猫たはむれる日向ぼこ




石段を風が降り来て冬館




風花よ童女のごとく笑みたまふ




寒紅をさしバーンズのパーティーへ




切れのよき回転白きセーターで




ハンカチを薄きに替へて春を待つ




夜の窓「雪が降る」のは歌にだけ




生牡蛎に同じ思ひの伝はりて




麦芽ぐむ思ひ出とほくとほく在り




猫二匹冬うぐひすも二羽で来る



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