俳 句 メ モ リ ー
年迎ふウィンナ・ワルツ聴きながら
「ウィーン・シュトラウス・カペレ」のジルべスター・コンサート。
若いメンバーが多く、シュトラウスの時代のような、赤いコスチュームでの演奏。
シュトラウスを主とした、ワルツやポルカを聴き
イザべラ・ラブーダの美しい歌も何曲か。
サファイアのような煌くドレスの歌姫は、長野オリンピックでの「第九」のソリストになる。
そしてカウント・ダウン!
高い所にセットしてあった、色とりどりの風船がステージになだれ落ちて来た。
「ラデッキー行進曲」では、にこやかな指揮者に合せての拍手。
テレビでいつも見ていた、ニューイヤー・コンサートのようで、楽しかった。
1月1日(木)
賑やかな声のあふれて二日かな
初日記キーボードなどに手触れつつ
日記を毎日書いたことはなかった。
折にふれて、気ままに書いたのは二十才前後と、その後にもあるにはあった。
そういえば育児日記は熱心に書いていたっけ。ただし、それも毎日とは言えない。
このページは三ヶ月、大晦日を除いて続いている。
いろいろな理由はあるだろうが、キーボードが気に入っていることもその一つ。
この頃、エレクトーンから遠ざかってしまっている‥‥
音が出るか、文字が出るか、どちらでもいいのかしら?
1月3日(土)
お年玉用意するのも三つのみ
それも、まだ渡していない。
明日か明後日か、新学期が始る頃になるのかもしれない。
子供達や、甥や姪のために、それぞれに合いそうなお年玉袋を選ぶのも楽しかった。
色の合う二枚の折り紙と水引きで作ったこともあった。
やはり、お年玉は元日から三日までに渡すもの。
1月4日(日)
羽子のごと紅きはなびらひらく花
山茶花が満開の時期で、この街の国道沿いにもきれいな色を見せている。
庭の山茶花も紅い色。
昨年秋に見た、松江の白と薄紅の斑の山茶花を思い出す。
剪りとって活けた山茶花が、部屋の温かさで、せいいっぱいに開いて
舞っている羽子のよう。
1月5日(月)
雪兎むかし朱塗りの丸盆に
七種の粥にはあらず枸杞の粥
年末から、一緒に食事することのなかった友人夫妻と中華料理店へ。
そんな話になったときから、「枸杞山薬粥」をと考えていた。
今日は、セール初日の子供服のお店で、半日ほど居たし、中華料理は最適。
同じビルのブティックで、わたしはセーターとカーディガンを買った。
いつもは混雑が嫌で近付かないセールなのに。
今日東京へ出張して、帰りに八重洲口近くで、やはりセールのセーターを買って来たのは‥‥
1月7日(水)
あの猫は何処へ行きしか寒の雨
今朝はミーだけが居た。
ミルクを皿に入れ、窓をそのまま開けていたら部屋に入って来た。
そばへ行っても逃げないで、ぐるぐる廻ったりしている。
こちらとしても、噛み付かれたり引掻かれたりは嫌なので、そっとしっぽに触ってみる。
「ニャーン‥‥」鳴き声が甘えてる。
この冷たい雨の夜、ミーとクロチャン、どうしているのだろう。
1月8日(木)
誰の声ビルの窓辺の虎落笛
落葉焚きなつかしくただ落葉掃く
マンションの小さな庭にも落葉は降る。中庭の煉瓦タイルの上には沙羅落葉。
掃きながら、ダンボールの箱に入れながら、思う。
ここへ越して来るまでは、広い庭で燃していたこと‥‥
庭は広すぎるし、街から遠くて困っていたのに。
落葉焚きは良かったな。
1月10日(土)
冬銀河地上に生れて煌けり
クリスマスの少し前に、「神戸・ルミナリエ」のホームページを見つけた。
数人の人に、カードに代えてURLを送ったし、わたしは何度もくり返し見ていた。
26日の夜も見たのに、27日になった時間には消えてしまった‥‥
わたしは、もっと見せてほしいとメールを書いた。そして、また来年の12月を待とうと思った。
今日、ブックマークに残ったのをクリックしてみたら、Luminarieは現れた!
わたしなどがメールを出したこととは、関係ないのかもしれない。
神戸の為の祈りなら、1月こそがふさわしいのだから。
1月11日(日)
水仙の黄金の漣うたふ詩
探し物をしていて見たホームページに、ワーズワースの詩があった。
「水仙」という詩。
何度か読み、原詩も見てみる。解説もある丁寧なページ。
昨日書いた「ルミナリエ」に通じるような、咲きあふれる黄色の水仙の輝き!
到底、俳句では表現出来ない。
1月12日(月)
冬凪の海よ島までさそふ橋
こんなに暖い日で良かった。
蒲郡のホテルの庭から眺める海は穏かな銀色。竹島への橋を渡ってみたくなる。
でも今日は、昼食のあと茶室へという予定。
メイン・ゲストは、知人の所で滞在中のカナダの人、ソフトな雰囲気の紳士。
わたしが誘った友達は、和服姿で。
ブライアンさんから、自筆の書を貰った。
「One Time,One Chance」と縦と横に重ねて書いた、絵のような書。落款まで押してある。
「一期一会」の意と、茶の心得のある彼は言った。
1月13日(火)
「伊予柑ね」大みかんに手を添へながら
故郷から届いた伊予柑をいくつか病院へ。
久しぶりに明るい表情で、付き添ってもらっている人と、隣の人と三人で話していた。
ピンクの花柄のパジャマのせいもあるかしら。
「誰から送ってきたの?」という問いに
おばあちゃまの知合いの名を言えばよかったのかも‥‥
1月14日(水)
割り入れて暫し眺めて寒卵
けだるさをむしろ楽しみ軽き風邪
二日ほど風邪気味と思いながら、過している。
仕事も最少にして、でも一番気になっていたことは、片付けた。
昨夜だって出掛けて遊んでいたし、ワインも飲んだし!
「風邪なの」という口実も使える声だし、都合がいいことも。
ビタミンCか、プロポリスか、効いてもいるみたい。
1月16日(金)
舞、太鼓女性ばかりの新年会
日舞を舞う一人は隣席に居て、あたりを華やかな雰囲気で包んでくれた。
詩を朗読したグループもある。
民謡「岡崎五万石」を謡った人は、昨年全国で最優秀だったとか。
櫓太鼓は隣の街からの特別出演で、勇壮そしてリズミカルな動きが見事。
仲間の日頃知らない一面を見て、賑やかに話をして
わたしの風邪は、何処かへ飛んで行ってしまったようだ。
1月17日(土)
寒紅梅その香をここに封じ込め
空っ風小学生の膝小僧
午後、急に強い風が吹き出した。
薄いセーターにコートを着ただけでは冷たい風。
それにしても、あの子達、半ズボンの制服でも寒くないのね。
バス停に並んでいる小学生は、男の子と女の子が、六、七人ずつに分れて。
じっとしていない男の子達の細い脚が元気そう!
1月19日(月)
手袋を仕舞ひわすれて素手のまま
こんなに寒い日には、手袋を持ちたい。
でも、どの引出しに入っているのだろう?探している時間はない。
そんなに長い道は歩くことのない日常に、手袋はかくれんぼした侭で冬が過ぎる。
むかし、お気に入りだった手袋、茶色に黄と白の毛糸編みの手袋を思い出した。
破れるまで使っていたっけ‥‥
今、引出しにかくれている手袋は二つ、ボルドーとネイビーの革。
1月20日(火)
少しだけ優しく切干し煮る時は
一昨日のこと、出先で思いがけないプレゼント。
ほんとに細い千切りの、白い切干大根のひと袋、沢山なので、またおすそ分けしたり。
今夜、冷凍庫にある宇和島の「てんぷら」を切って、一緒に炊いた。
匂いも味も懐しくて、わたしは優しくなっていく。
歳時記を見たら、愛知県は切干しの特産地とあった。知らなかった!
1月21日(水)
兄妹の猫たはむれる日向ぼこ
日向ぼこと猫は、付きすぎ、でも本当にそうなんです。
南向きの芝生とぬれ縁は暖かく、午前中はいつもミーとクロチャンがいる。
クロチャンがお兄さんで、ミーが妹、そう勝手に決めてしまった。
なんとなく、クロチャンの方がミーを守っている感じがあるから。
‥‥外猫を可愛いと思い始めたらしい人もいる。
1月22日(木)
石段を風が降り来て冬館
近くに一軒だけ、冬館と呼びたい建物がある。
石段が右斜めに登り、それに沿って大きなつつじの植込み。
そういえば、その階段を降りる人も、上る人も見たことがないような気がする。
鮮かなつつじの咲く季節に、洗濯物がいっぱいに干してあるのは見た。
枯葉と一緒に、降りて来るのは風。
1月23日(金)
風花よ童女のごとく笑みたまふ
寒いというより、冷たい日。
庭に風花が舞う。とても綺麗。
一昨日転院して、日当りのいい個室に入ったおばあちゃまを、夕方訪ねた。
「医者付きホテルね」と喜んでいる。
ほんとうに、うれしそうな、おだやかな表情に、ほっとした。
1月24日(土)
寒紅をさしバーンズのパーティーへ
Robert Burns は18世紀のスコットランドの詩人。
「蛍の光」「故郷の空」などの原作者で、 1月25日が生誕記念日。
Munro夫妻から、本国と同じようにパーティーを開くと誘われた。
みんなが時々立寄るバー「デンバー」が会場。
Munro家に伝わるタータンの図柄を見せてもらう。キルトもお持ちだとのこと。バグパイプも。
夫人の手料理でスープのあと、HAGGISを切る前には、ものものしく、少しユーモラスなセレモニー。
Munro氏は学者なのに、動きも語りも、素敵な役者に見えてしまう!
スコッチウィスキーを飲みながら食べるHAGGISは、ミートローフのようで、美味しい。
添えられたポテトと蕪のマッシュが本当に良く合う。
詩が読まれ、Toastがあり、英語と日本語の会話が楽しかった。
みんなで手を繋いで「Auld Lang Syne」を歌った。
豊かな数時間に、寒い夜も暖く感じられる。
1月25日(日)
切れのよき回転白きセーターで
レッスンを受けている人のふわふわした薄手のセーター。
濃いピンクのスカートが廻る度に広がる、揺れる。
上級のルンバはステップもさることながら、廻り方が難しい筈。
シャープな動きをする彼女に見とれている。
回転のあとで見せる表情がキュートで、ダンスの上手な女優さんに似てる。
誰だったっけ‥‥
1月26日(月)
ハンカチを薄きに替へて春を待つ
夜の窓「雪が降る」のは歌にだけ
シャンソンを聴く会、街を見下すレストランで。
カーヴしたガラス張りの窓から遠く街の灯が見えて、その他は闇。
何曲目かに「雪が降る」を唱っている‥‥
全面のガラスの向うに、雪がちらついてほしい、と思った。
アンコール曲は「おー、シャンゼリゼ」
わたしが付けて行った香水も「シャンゼリゼ」
1月28日(水)
生牡蛎に同じ思ひの伝はりて
夕食は外国のビールをいろいろ置いてある店で。
季節柄メニューには生牡蠣がお薦め、四人のうち二人は直ぐにオーダーを決める。
わたしともう一人は、しばし無言。ややあって、宇和島の海のならな、と彼は言う。
おんなじだ!
好きなのに、不思議なことに、食べたくない。説明はしにくい。
結局、お店の人のアドヴァイスで焼牡蠣を頼んだ。
1月29日(木)
麦芽ぐむ思ひ出とほくとほく在り
この季語には、あざやかに思い出す句がある。
23才位だった兄の句。わたしはまだ十代だった。
夕刊の映画欄に「ポネット」のガイドがあった。サブ・タイトルが誘った。
-天国のママに、もう一度あいたい-
そして、こんな説明。
「子どものまなざしで、生きるよろこびをとらえ、魂を深く揺さぶる、珠玉の感動作!」
見に行きたい!そう思った。名古屋まででも行きたいと思った。
こんな時、わたしは簡単に17才に戻る。
1月30日(金)
猫二匹冬うぐひすも二羽で来る
冬鶯を詠うのなら、もう少し優雅な句にしたいのに。
でも、これが、実景。作句の基本の写生‥‥?です。
朝、山茶花の蜜を吸うために、鶯が来ていることがある。
隣接の大きなお寺の森に居るのは確かだし、昨年早春に、わたしの庭でも啼いていた。
もう暫くすれば、「ホーホケキョ!」が聴けると思う。
只今のところは、日中に来る二匹の「ニャーオ!」のみ。
1月31日(土)
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