俳 句 メ モ リ ー
冬の虹架れば橋を渡りたし
Somewhere over the rainbow way up high,
There's a land that I heard of once in a lullaby,
Somewhere over the rainbow skies are blue,
And the dreams that you dare to dream really do come true.
「虹の彼方に」虹色の平和な国が、あるのかもしれない‥‥
2月1日(日)
コーヒーに打明けばなし春隣
知らない、新しい珈琲店の名を友達は言った。
半年ぶり、それ以上かもしれない、彼女とゆっくり逢うのは‥‥
この一年ほどは、電話以外で友人と親しく話をすることも、なかったような気がする。
黒いセーターのタートルネックの下に、バランスよく見えている、シャープなデザインの金のネックレス。
彼女のセンスの良さを改めて思いながら、長い話。
2月2日(月)
毛糸玉やさしきひとの膝元に
編物をしなくなって久しい。
自分で編むのも楽しいものだが、誰かが編んでいるのを眺めるのもいい。
男の方の、「毛糸編む」の句に、あたたかい視線を感じるのは、奥様へのLove Song?
わたしの句の毛糸の色は、ブルーか白、と限定したい。
二人の人のイメージの色。
2月3日(火)
春立つ日女児誕生のはづむ声
昨年の春、私達が仲人をさせて頂いたカップルに、ベビー誕生。
朝、お母様から、「生まれました!女の子です!」との電話。
しばらくして、ホヤホヤのパパからも。
「ご感想は?」と平凡な質問に、「そうですね‥‥」と一呼吸。
「たいへん綺麗な泣き声でした!」
ギターを弾き、歌うパパの、非凡な言葉が素敵!
2月4日(水)
冴返る思ひ出したき歌ひとつ
夕方のテレビで、長野へ着いた力士たちが映っていた。
コートなのか、マントなのか、見慣れないスタイルで、「寒い!」と言っていた人もある。
土俵入り?大丈夫?
いつもは相撲にあまり興味ないのに、イベントとなると、面白そう!
華やかな開会式を楽しみにしている。
競技では、フィギュア・スケートが好き。
前の冬季オリンピックの歌を口ずさんでみる、途中で分らなくなって奏いてもみる。
あんなに気に入っていた歌なのに、半分ほどしか思い出せない‥‥
ロビーには菜の花の鉢整列す
ホテルへのエレベーターの横に黄色の列。
こんなところで菜の花畑のミニチュアに逢うなんて!
早すぎる‥‥とは思っても、春を感じたことは た・し・か!
友達と、遅いお昼御飯を採ったあとのこと。
そのひとの微笑も春風のようだった。
2月6日(金)
早春のオリンピックに藁の神
オリンピアにはなかった神様、大きな藁の道祖神。
色彩的には、地味だと思ったけれど、雪蓑をかぶった子供達がセーター姿になった時に
世界中の国旗の色があふれた時に、より大きな効果が生まれた。
子供達の白い帽子、立体感のあるボトム、あざやかなセーター、生き生きと夢がある。
デザイナーの入江美樹さん、小沢征爾夫人というよりも、素敵なモデルさんを思い出した。
森山良子の赤い彫像のような姿、高く透る歌声!
それぞれの色が楽しいユニフォームの選手団!
お相撲さんと子供達!
聖火ランナーと子供達!
雅楽と太鼓!
そしてベートーベンの第九でつながる五大陸!
素晴しい開会式だった。
2月7日(土)
受験生持つ母屈託なく笑ひ
ティールームへ遅れて来た彼女は座るなり言った。
「ぜんざいが美味しいって、誰かに聞いたのですよ」そしてメニューを見た。メニューには書いてない。
「頼んでみれば?」わたしは言う。「食べたいな」と彼女はウェイトレスを呼ぶ。
先にわたしと来ていたもう一人、笑いたいのを我慢している‥‥
二人は入口の《おすすめ》を見て、飲むつもりだったコーヒーを中止してのオーダー済み。
暫くして、ぜんざいが二つ運ばれて、続けてもう一つ。
一瞬呆気に取られていた彼女は、まるで高校生のように騒いで、わたしの腕を叩きつづけた。
三人で大笑いして食べたぜんざいは、ほんとうに美味しかった!
2月8日(日)
チョコレート買ひて余寒の街に出る
あれだけいろいろなチョコレートが並んでいると、買ってしまいますよね。
ヴァレンタイン・デーにチョコレートを、初めに貰って来たのは、中学生だった長男。
いや、その父親がバーで貰ったのが先だったかな?
わたしが初めて買ったのは、お兄ちゃんのように貰えない、小学生の次男の為だった。
こんなに沢山買うようになったのは、何時の頃?
でも、残ってもいいように、わたしの好きなチョコレートを選んでいる。
2月9日(月)
凍返る夜を華やかにフィギュア舞ふ
今日は冷込んで、しかも風の強い日だった。
暖かかったのは、暖房の効いたビルの中でだけ。
今夜も椅子に掛けている足元が冷えて来る。
テレビでは、もっと冷たそうな氷の上で、華麗なフィギュアが競われている。
音楽に乗って、ペアの息の合った流れるような滑り、回転、ジャンプ‥‥
コスチュームもそれぞれに美しい!
2月10日(火)
プリムラもオリンピックの色で咲き
大きな鉢に寄植えのプリムラに水を掛けたあと、咲き終った花を摘む。
手が濡れて、先に摘めばよかった、と思いながら。
ミーが近づいて来て、足元で鳴いている。
ほんと、あたたかい日ね。
赤、黄、青、白、ピンクと縁取って植えてあるから
眺めているうちに、オリンピックの五輪のマークが重なった。
二色の色違いは、おいといて、そう決めてしまった!
2月11日(水)
小さき手に棘ある海胆を持ちしこと
そのころ、瓶詰の雲丹は知っていても、大人の食べるものと思い込んでいた。
四国の南の港で、祖父の会社のおじさんに、無理やり持たされた黒い棘のかたまり。
「これが、ウニですよ」と言われても、それがどうしたの、という感じだった。
それなのに、お寿司屋で雲丹を注文する時は、いつもあの時の潮の香を思っている。
牡蠣が付いた岸壁に打ち寄せていた、泡立つ波の音までも‥‥
2月12日(木)
春風のやうジーンズの責任者
すらりと背が高く、ほとんど化粧していない笑顔がさわやか。 水道設備工事担当の女性。
彼女と話していると、今日の天気のように、春風を感じる。
何時か聞いたことがある、趣味はアイスホッケーだと‥‥
その彼女が、明日のために、仲間のために
そっと、チョコレートの赤い箱を、袋いっぱいに用意していた!
2月13日(金)
チョコレート渡しもせずに恋の猫
今日差し上げたのは、相当な数のチョコレート。
世に言う義理チョコとは思わない、そして恋の告白でもないだろう。
買うのが楽しくて、貰って頂いている‥‥ムード・チョコ。
わたしが結婚した人には上げていない、むしろ、わたしは、その人から結果的に沢山いただいてしまう。
息子たちには、初めてE-Mailで送った。そう、ここのチョコレートと同じように。
2月14 日(土)
諦めし旅の明るさ春帽子
本当なら、今ごろわたしはクライスト・チャーチの街に居るはず‥‥
参加できないことになって、さっと諦めていたのに
昨日出発した人達が、陽光の下、花であふれる街並みを歩いている、と思ったら
ちら、とため息はもれてしまう。
旅に出ているつもりで、主婦、やめた!
5日間、そうしよう。
2月15日(日)
啓蟄やちひさなちひさなみどりいろ
旅行中のつもりのわたしは、暖かいお昼前に庭でミーと遊んでいた。
片付けものとか、洗濯とかしないんだから。‥‥とりあえず、今日は‥‥
ミーの好物のだしじゃこを持って、芝生でミーをからかっていたら、枯芝に混じる緑の芝がゆれる。
一本だけゆれるので、???、と見つめる。
なんと、なんと、5ミリほどの緑色の虫のアタマ!
「春カナ」と覗いている!
暦の上では三月の初めらしいけれど、今日、わたしは本当の《啓蟄》を見たんだ!
これ、みどり色で書きたかった。
2月16日(月)
信濃路に色あざやかに蝶舞へり
今日はジャンプで、日本の金メダルがふえた。
でも、この句は昨日のこと。
わたしは、アイスダンスが一番好きで、それもフリーが最高。
日本が、というよりも、素晴しい演技が見たい。
音楽に乗った、ペアのダンスの美しさ、コスチュームの美しさ。
ストーリーのあるもの、華やかなもの、かろやかなもの、それぞれに楽しい。
リンクの上に、世界中の蝶が集い、つぎつぎと舞っていた‥‥
2月17日(火)
如月にバンドネオンの宵もあり
昨夕、親しいご夫妻に、タンゴの会に招かれて、海辺の町へ。
陽が沈んで間もない空は、早い春の暮色、深いむらさきの山なみが港を包む。
ピアノ、ヴァイオリン、バンドネオン、三人の奏者。
「Torio Los Rosarinos」と、29才の歌手は日本人、名古屋出身でアルゼンチンで歌っている人。
わたしの好きな「El Amanecer」が、素晴しかった。
たそがれの海辺を見たあとの曲が「夜明け」!
わたしも、ほんの、ほんの少しだけ、あの不思議な楽器の、バンドネオンを奏いてみたことがある。
コンピューターを触る方が、ほんと、簡単なくらい、難しい。
2月18日(水)
ふきのたう想ひの幾つほろにがき
蕗のとうの、揚げ物がひとつ付いていた日本料理。
春のかおりと、微かなにがみが広がる‥‥
こんなふうな想いを、いくつか感じているこの頃に、あらためて気付く。
苦味の強いもの、蕗のとうぐらいのもの。
人生の、というのは大げさかもしれないが、生活のスパイスと、とらえている。
ないよりは、あった方がいい。
2月19日(木)
春めきてチャチャを覚えし金の靴
うす紅の椿咲きつぐ微笑まむ
日中、ずっと窓を開けていたほどの暖かい日。
切り花は部屋にも活けてあるけれど
庭に出てみると、ピンクの椿が今年は本当によく咲いている。
蕾もまだ多いし、暫く咲きつづけるだろう。
冬を越えて、早春に咲く椿の、 淡い色の椿の、優しげな「つよさ」を分けてもらいたい。
お人好しだけでは、いけないよ!
2月21日(土)
壮大に春の夜空へ花火咲き
冬季五輪閉会式は踊りの輪
浅き春三つの国の旗、国歌
2月22日(日)
レタスちぎる今宵も白き皿の上
暖かい一日だった。夕食にサラダをと、レタスをちぎる。
この間行ったイタリアン・レストランの味を、ふっと思い出す。
オリーヴ・オイルで海老とトマトを炒めて、白ワインで仕上げ、レタスに掛けてしまった。
いい加減なのに、美味しかった。
ユトリロの絵のような、白い塀と壁の小さな店だった。
それも、街を少しだけ出た畑の中にある。
いい店を見つけたね、とみんなで話したが、今度ちゃんと行けるかな?
2月23日(月)
私をとうすむらさきのフリージア
そんな声が聞こえたような気がした。
久しぶりに入った花屋の春の花があふれる中で、そう聞こえた‥‥
わたしはミニ薔薇がほしいと思った。濃い赤の。
でも、暖房の効いた所へ活けるので、どちらも止めて、菜の花と淡いピンクの百合を買った。
昨夜のこと、シンガポールでは菜の花が高くて、と聞いたからかもしれない。
家の玄関のためには、春そのものの桜草の鉢をひとつ。
2月24日(火)
目刺青く光りて並ぶ店の端に
パンジーにあるは三つの物語
頬染めて頬寄せ合ってチューリップ
数日前に、あるホームページで素敵な写真を見た。
春を告げるチューリップ。
あまり、きれいなので、デスクトップの真中に飾らせてもらった。
チューリップの写真はたくさん見ているのに、どうしてこんなに惹かれたのだろう。
多分、 むかしの映画の、Love Sceneみたいだったから。
2月27日(金)
沈丁の襟元白く咲きにけり
秋に植えた小さな木に、やっと五つほどの沈丁花が咲いた。
幾つかかたまった蕾のうち、一つだけひらいたのなど、臙脂色の着物の襟の白‥‥
いま流行っていて、家にも飾ってある、ミニチュア内裏雛のよう。
素敵な香を焚き染めた内裏様。
今日誕生日のひとに、黄色の華やかな薔薇を一輪、E−Mailで届けた。
彼女も黄色が好き、わたしも黄色が好き。
庭の沈丁花も届けられたら!
2月28日(土)
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