俳 句 メ モ リ ー

















高まりて広がる白き夏の波




夏の夜に甘き香放つ夢の花




青田道十頭ほどの赤き牛




一口でこれこそバナナと歓声が




夏星は地上に在りて煌けり




青芝の庭と猫とに迎へられ




会合のテンポにずれる五月かな




柏餅五つを買ひて戻りたり




緩やかに曲る新樹の道が好き




母の日に母の退院手を添へて




枇杷一つただ一つのみ実をつけて




鹿の子を立たせ母鹿優しき眼




翡翠の色より好きな石のあり




黄のボタン落ちかたばみの花となる




新しき葛餅の味ほの甘く




茉莉花よ一輪咲くと語る友




雨上りヨット模様を着たくなり




真夜中の騒動のたね大百足虫




クッションに咲き空色の薔薇の花




夏草に伏し祈る若き人のあり




水争ひならぬ思はぬ季語争ひ




太きにはふときものあり蕗の糸




広がりてただ染むを待つあぢさゐよ




華やかな杜鵑花の崖に向ひゆく




切手買ふみかんの花にさそはれて




夜濯ぎや黄のTシャツのためにだけ




香水を避けたくもなりこの湿度




青き香の新茶とどけり今年また




絵扇や結婚御祝熨斗袋




海南風ブーゲンビリア届きたり




硝子器にまろく盛られて鱧白き



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