諏訪の湖青し空蒼し今日の秋
花籠を抱へて童女秋初め
爽涼や白樺の幹に手を触れて
もろこしの甘さあの日の祖母の声
草の花旧知のごとき初対面
トランペット駒ヶ根に霧流れゐて
ひたすらに光を求め秋の蝶
海は夜石榴の色のカクテルと
仮名文字を聞き間違へて秋暑し
想ひ出を物語るのか水引草
待ち望みし紅葉のごとき「枯葉」なり
秋風と呼べず花房白く揺れ
午後の秋シュークリームを一つだけ
掛軸を巻きて子規忌の近づけり
新涼やむらさきの花一輪に
初月に語りたきことさがしをり
蕎麦の実のひとつぶ箸でたしかめる
飛行機の欠航はなし台風圏
金柑の緑の実もつ枝の欲し
濃みどりの器のごとし南瓜は
台風は遠し子供の神輿来る
いざよへる月を誘ひて淡き雲
仲秋や投函の音よく響き
やはらかきまろみとはなり居待月
白き花咲けり三輪臥待月
更待月出ぬ日友とはすれ違ひ
狩人のオペラ観終へて海へ出る
秋鯖の押し鮨を買ふ物産展
白粉花おんなどうしの内緒ごと
小さき花の仕草いろいろ吾亦紅
蟲の音の低音響くやうになり
秋夕焼染色展の誘ひ来て
花よりも先づ香のこぼれ金木犀
稲孫田の緑より翔つ鳥の群
朝影に白きコスモス未来まで
電話ではお茶事の話杜鵑草
やや寒し朱き卵を選びをり
木犀の精は空へと舞ひ昇り
秋日和ホースのしぶき七色に
ほどの良き料理を載せて柿紅葉
黄格子のブレザー櫻紅葉背に
ふるさとの白き町並暮の秋
旧友と話してみたき冬隣
満天星の紅葉は淡く日は替る