季 節 の 中 で
冬
三匹の猫ねむる夜冬に入る
窓ガラスの外にバスタオルを敷いてやっている。
ブラインドを50センチほど開けたままにしてあるのは
ミー親子がかたまって眠っているのを見たいから。
ミーが白っぽい三毛、チコがグレーのキジ、クロベエは名の通り。
みんな同じ色だったら、一匹に見えそうなほどくっ付いている。
猫って、完全に母系家族。
それを、こんなに大きくなって維持しているのが不思議だし
なんか、あたたかいものを感じてしまう。
11月8日(日)
その辺りやはらかき風返り花
今年はそれが多いのよね。
桜でしょう、金木犀でしょう!
ふつうは見かけない返り花が、いっぱい咲いて。
薄紅色の椿は、ほんとうに綺麗。
初夏の頃から何度も咲いているブーゲンビリア、これも返り花っていうの?
11月10日(火)
群なして斜めに飛びてゆりかもめ
冬夕焼ビルの谷間へ沈む陽よ
夕方4時21分発の電車に乗った。
名古屋に入った頃には、車窓からの空が紅い。
重なるビルの間に、瞬時に垣間見る、驚くほど大きな夕陽!
恒例のJazz Partyはフルバンドで、大人の雰囲気のシンガー。
「スターダスト」「ナイト・アンド・デイ」はお得意だし、「素顔のままで」もなかなか。
11月14日(日)
降る星の冴え煌くを夢に見む
流星群を見に行く時間を
4時に変更と、ファクシミリが来た。
「星に願いを掛けたいです」なんて書いてある。
彼は、夢見る写真家。
一緒に行くだれかさんは?
先ず、今は空いっぱいの雲が、流れて行ってほしいわね!
わたしは夢の中で、星の降るのを見ることにします。
11月17日(火)
みかん掌にその香指より広がりぬ
この句が出来て、この絵に決め
一番に書きたかったのだけれど、なぜかストックしていた。
あゝそうだ、「立冬」を使うためだった。
その時の蜜柑はたぶん蒲郡のもの。
今年はことさら、蜜柑が気に掛る。
「みかんの花咲く丘」の切手を買ったのも、この初夏のこと
それからのいろんなことが、掌の中の蜜柑のように思えて来て‥‥
11月19日(木)
白菜のことさら美味し鍋囲む
白菜の絵を掛けた日に、白菜が届いた。
絵にあるように緑の葉が多い白菜。
特別な栽培によるものなので、切りながら、わたしは生で食べてみた。
自然な味がする!
名古屋コーチンと、豆腐と白菜をたらこの味付けで鍋にして
来客と一緒に、ボジョレ・ヌーヴォーも愉しんだ。
11月22日(日)
冬紅葉河を上下の遊覧船
見下した夜の大川には
光を纏った船が、ゆれて行く。
空には、夜間飛行のライトが着陸の準備。
朝日を浴びて眩しい川面を
遊覧船は通勤船になって、岸を離れている。
両岸には、紅葉した桜並木。
友達と、ちょっと優雅になりたくて、とあるホテルへ行きました。
そこで、新しい友達にも、逢えたのです。
すてきな小旅行をして来ました。
11月24日(火)
障子張り頼むと決めて安堵して
三年も過ぎてしまったかしら。
気になっていたものの、自分で張るのはいや。
丁度ついでがあったので、お願いした。
明日の朝、取りに来てもらったら、明後日夕方には届くそう。
真っ白い障子になれば、それでもう、大掃除をしたような気になるのかも!
11月26日(木)
冬の鳥デュエット白銀の渦の
なんとなく浮き立つこころ大聖樹
数年前の活気は感じられない街で
クリスマス・ツリーは変りなく、むしろ少し華やかになっているような。
必要だから、丁寧な買物をするという
むしろ本当に落着いた十二月に、なるのだろう。
それにしても、なんとなく、なんとなく嬉しくなるんですよね!
12月2日(水)
赤く燃え紅く灯して冬の庭
昨日の朝、満天星の紅葉は燃えるような色だった。
今朝は雨に濡れて、深い色。
山茶花が点々と咲き、クリスマス・ツリーの趣を見せている。
猫達も遊んでいるのに
冬鶯が二羽、さるすべりの枝へ来ていた。
片隅には、金柑の橙色が少しと
千両の濃い黄色。
わたしは、この小さな庭が好き!
12月4日(金)
薄造り河豚が良いともおこぜとも
食べたわけではないんです。
他のものを頂きながら、みんなで話したテーマです。
うちの二人は、河豚って特に好きとは思いません。
「あの、薄いのがいやだねえ、刺身は厚く切ってもらいたい」
「わたしは薄造りも好きよ。でも、おこぜの方が味がいいな」
こう言い切ってしまうので、河豚党の人には全く申し訳のないことで。
12月6日(日)
凩やそれでも街にきらめく灯
車で移動するこの街だから
木枯しだろうと、雨だろうと、それほど関係はないわけで。
それでも、店から出て少しの間は、寒い思いをする。
十二月に入ってから、街の灯はどんどん明るくなって
今夜見つけたのは、とても綺麗な沢山の光のロープ。
何の店だろう?
車の窓から見たら、なんと、和食のお店!
12月8日(火)
凍星をトランペットは瞬かせ
Jam Session に参加したトランペットは、とても綺麗な音。
クラシックがベースにあるせいなのか
自由に歌うのも品があるような‥‥
同じく初めて聴いたドラムスも、爽やかなリズム。
その前の、友達と三人での夕食が、久しぶりの豊かなひとときだった。
12月10日(木)
ポインセチアの赤よ白きの降るを待つ
牡蠣を買ふ自づから瀬戸内のもの
広島の牡蠣と、浜名湖の牡蠣が並んでいたら
迷わずに広島のを買う。
浜名湖のものだけだと、それにする時もあるが、先ず他のメニューに変更。
三重のものでも、似たようなことをしてしまう。
思い込みもはげしすぎる、でも仕方がない。
今日は、1種類しかないが、美味しそうで無性に食べたくなって、買った。
帰ってから見ると、それは岡山産‥‥
やっぱりね!と思う自分が可笑しい。
12月14日(月)
ふるさとの事のあれこれ鮟鱇鍋
県人会の中のまた同窓会、というゴルフ・コンペ。
初めて参加しただれかは、同窓ではないのに、寄せて貰ったよう。
その流れで、レディースは夜の部だけ参加。
6人で、1ダース位の賑やかさで、鮟鱇はどこへ入ったのかも分らないほど。
それぞれが、それぞれに繋がりを見出している不思議さ。
それにしても、伊予の人ばかりが集って、どうして、鮟鱇鍋なの?
12月15日(火)
畳替あたらしき風流るべし
青畳の色と匂い‥‥
畳屋さんの作業を見ることは、もうないけれど、思い出すことは出来るわ。
畳だけではなく、壁も襖もフローリングも変えて、今までとは違った部屋になった。
あとは、カーテンで仕上げ。
住む人たちは、暖かい風を運んでくれるんだろうな。
なにしろ、赤道直下から帰って来るのだから、ね!
12月17日(木)
加速度で広がる世界冬銀河
現実の銀河は下界の明るさで、細くなっているのに
インターネットの世界の銀河は、どんどん広く輝いて来る‥‥
こんなに夢がいっぱい、あふれるようになるなんて!
長年の愛読誌にホームページが出来て、嬉しくてMailを書いた。
そのメールの一部が、その雑誌の来月号に載るそう。
今日はこんな電話が掛かった。
「Post PetのCD-ROMを送るわね!」と。
わたしのペットはミーだけじゃなくなりそうな。
その電話のひとのおかげで、父の蔵書をふるさとの海辺の町へ、寄贈させて頂けたこと。
これが、わたしにとっては、一番大きなインターネットから生まれた歓び!
12月20日(日)
今朝も掌に残るかに思ひ柚子湯の香
フルートは奏で上げたり“Oh Holy Night”
電灯を消して、幼い子達から廻されたキャンドルの灯りのみ‥‥
聖書朗読と短い説教の間を、音楽でつなぐイヴ。
ソプラノでは“Ave Maria”など、ヴァイオリンはバッハの、なんだっけ?
一番素敵だと思ったのは、このフルート!
よく女声で歌われるものなのだけれど、フルートはメロディーの美しさを輝かせるみたい。
12月24日(木)
荷を開けて目に入り来る酢茎漬
京都の漬物を送って頂いた。
千枚漬とかぶら菜と、そして酢茎。
京都ではないが、大津に住んだことがある。
あの、冷い冬。
干した洗濯物が、すぐに凍っていた。
そんなことを思い出させてくれる、歳末の贈物。
12月26日(土)
やはらかし畑一面の朝の霜
仕事納めの集りに参加した。
8時にならない頃の、この辺りの眺めは、清々しい。
東に矢作川、そのこちら側はまだ田も畑も‥‥
暮していた時には、好きでなかった風景が、素晴しく見える。
あの、朝日の中の、白い優しいかがやきは、まさしく自然の美しさ!
12月28日(月)
友人に会ふこともまた年用意
年末だから、いろいろな人に会いたくなる。
会えなかったら、電話で声を聞く。
或いはメールのやりとりも。
初めて父の色紙を玄関に掛けてみた。
十年ほど前の正月に、三河湾の日の出を詠んだ歌。
兎が付けられた羽子板の形のお飾りと、金扇を並べて。
12月30日(水)
去年今年鈴の音響く三番叟
コンサート・ホールの舞台で
若い二人の狂言師が舞う、躍動感のある目出度い舞。
鼓と謡と能管に、鈴の音が、掛け声が呼応する。
一年前のウインナ・ワルツに揺れた、ジルべスター・コンサートとは、がらりと変った
日本の伝統を主とした催し。
「立花」の所作よりも
パイプ・オルガンのバッハ数曲よりも
「翁」そして「三番叟」が印象的だった。
1月1日(金)
白鳥よ金と真珠のブローチの
初売りの福袋が並んでいる。
ホテルの中のブティックは、やはり明るい雰囲気を見せて
眺めているのが楽しい。
買う気もないのに覗いていた、真珠店のウインドウに
ひとつ、目を引いたブローチが‥‥
「買わないけれど、俳句にするわ」
そう、友達に言ったから!
1月2日(土)
印刷す賀状に代へてこのページ
今年は年賀状を出さなかった。
戴いた年賀状は多くて、嬉しい。
楽しいのは、おばあちゃまの従弟からも来ていること。
高校生の頃甘えさせてもらった、素敵な外科医のオジサマ、いえオニイサマ。
年賀状は、新しい年のご挨拶。
どんな時でも出した方がいいと思う。
大好きだった先生からも頂いた。
本当は薬剤師なのに、当時は英語の先生だったオバサマ、いえオネエサマのような方。
《今年の年賀状の俳句はどんなのでしょう、楽しみです》と書かれてあった。
どうしよう‥‥
思い付いたのが、このページそのままをお送りすること!
カラーでプリントして8枚、明日投函しよう。
1月3日(日)
矢作川五日の旭昇りたり
7時前に朝食をとって出掛けるなんて‥‥
寒いだろうな、と思っていたのに
車を降りて見た土手の上の、朝日の美しさ!
紅白の幕、柏手、乾杯。
仕事に飛び出して行く若い人達。
今年って、きっと良い年になるよね!
1月5日(火)
カーテンを透す陽射しや福寿草
リフォームを終えた部屋の
レースのカーテンから、明るい光が床いっぱいに射し込む。
なんにも置いてない家の、広いこと。
特にキッチン!
あぁ、わたしのキッチンも片付けなくちゃ、と思う一瞬。
そして、それは思っただけ‥‥
思っただけで、いいんです。
1月7日(木)
風花よ文字なき便り読みてをり
万物を包みて白し朝の雪
寒紅をひく間もなしに家出妻
昨夜、わたしは家出をしたのです。
ノーラのように気の利いた科白をいうべき相手は留守の時に。
夕方家に帰って、異様なにおいにひたすら耐えて3時間‥‥
思考力散漫、焦燥感、眩暈、動悸 etc.エトセトラ。
「お部屋あります?」と電話してから、だれかにも電話、「後でホテルへ来てね」(おぉ、かっこいい!)
それから、とにかく飛び出していました。
においのモトは、<猫にげる>なるもの。
植木の手入れをしてもらう人に、注意され、お任せしたのです。
根元にいっぱい撒いてもらったものの、なにしろマンションの小さな庭。
もろ、家の中まで入って来ます。
むかし、問題の白蟻駆除剤で、訳の分らない不調に悩まされたわたしですから
だから、 とっても敏感なんですね。
野良猫ではなくなったようなチコやクロベエは、逃げないで
ノーラではないわたしが、一目散で逃げ出したんですよ。
P.S.
遅く帰っただれかは、クロベエみたい、なんともなかったんだそうです。
で、わたしはホテルで一人きり。
でもね、今朝はお友達を誘って、朝食とお喋りを楽しんで来ました。
ああ、そうだわ、「女正月」ということかしら?
1月15日(金)
投扇を支へる指の長さかな
一度だけ、何処かで投げてみたことがある。
思いもしない方向へ、思いがけない速度で行ってしまった。
今、わたしは玉三郎の指を見ている。
もちろん、実物のわけはない。
「ミセス」のグラビアで、笑っている玉三郎。
扇にも、指にも、ピントは合っていない。
こういう状況で、こういう人がなされば似合う遊びなのだなあ!投扇興って。
1月18日(月)
寒稽古「元禄繚乱」馬最中
漢字ばかりが並んでしまいました。
最近そういうサブ・タイトルの付けられた、もともと「赤馬」という和菓子を頂いたのです。
殿様がお乗りになった馬だそうです。
そうそう、勿論吉良の国の。
此所とは、隣の国だったのでしょうね。
玉三郎に続いては、石坂浩二!
1月20日(水)
後れ毛の揺れやはらかし春近し
待っていた絵が届いた。
洛介さんからの素敵なプレゼント。
色鉛筆の繊細な線の重なりから生れて来た少女は
「春愁」と呼んでいいのかな、微かにそんなものを漂わせる視線で
何かを見つめている‥‥
想いに浸っている‥‥
こんな季節もあったわ。
ありがとう。
優しいファンタジーを。
1月22日(金)
縄編を覚えし朱き毛糸玉
二本の棒針で毛糸を編むことを知ったのは
幾つの頃かしら。
表編、裏編、ガーター、袋編。
母の編物の本を見ながら、やっと出来た縄編。
その時は、わたしのセーターと同じ、オレンジ色の毛糸だったように思う。
あの太い毛糸が、まだどこかの箱の隅に残っている‥‥
そんな気がしてならない。
縄編が好きで、機械編だと簡単に出来るので
子供のセーターによく入れていた。
今も、縄編のあるニットを見ると、欲しくなってしまう。
1月26日(火)
白き葱切りをりチャイム鳴るまでに
寒さが戻り、二人ともなんとなく風邪の気配かな‥‥
夕御飯はお寿司を取ることにした。
親しい人からの電話があって
もしかしたら夕食を一緒に、そう思い、一二品作ることにする。
山芋を摩り下ろして入れる清し汁は、葱を添えて。
「美味しい!」と言ってもらった。
そう!自信作なの。
祖母からの伝授なの。
温まって、風邪にはならないわ。
1月29日(金)
微笑みの想ひ浮かびて寒満月
この空も今しばらくの冬景色
雪道を戻り二人で豆を撒き
食事をしていた店で
雪が降り始めたと、教えられた。
道路が真っ白になっている。
急いでタクシーを呼んでもらい、客を駅まで送って帰る。
家の近くまで来たものの、車が通ってない道はスリップしそうだから
降りて、ゆっくりと歩いた。
先に帰っていたひとと、小さな枡に入れた豆を撒く。
外へ向けては少しだけ撒いて、家の中は、棚などへ数粒を置く。
新婚さんの頃から、うちではこんな節分なんです。
今日の煎り青大豆は、本当に美味しくて、食べる方が良いし!
2月3日(水)